イキルキス 舞城王太郎 感想

舞城王太郎『イキルキス』感想です。
まず表紙について一言。
なんともまぁ可愛らしい装丁だこと。
イキルキスイキルキス
(2010/08/17)
舞城 王太郎

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物語には生をもたらすキスと、死を招くキスがある。
青春、恋愛、セックス、暴力、家族。みんなカナグリ生きている。

荒々しく吹きすさぶ言葉たちはいつしか紙の上に優しく降り積もり小説となる。

本書は表題作『イキルキス』の他、『鼻クソご飯』、『パッキャラ魔道』を収録した短編集となっています。
簡単にあらすじをば。

イキルキス
僕の通う西暁中学校で同じクラスの女子6人が続けざまに謎の突然死を遂げる。そんな中、いきなりクラスメイトの八木千佳子が尋ねてくるのだが……
鼻クソご飯
幼い弟を強姦魔に殺された俺は、この世のあらゆるホモやロリコン、そして性欲、精液までも許せない。己の怒りに任せた行動の末、俺はあっさり刑務所にぶち込まれる。そこで俺は絵を描いたり、西川濠と出会う。
パッキャラ魔道
僕の家族はある交通事故をきっかけにぐちゃぐちゃのバラバラになっていく。

……すいません、パッキャラ魔道のあらすじは無理です。
いや、他のもどっこいどっこいですけど。
舞城作品のあらすじを書こうとした自分が愚かでした。

例によってネタバレには全く考慮しておりません故、ご注意ください。
要は既読者向けだということです。

イキルキス 「群像」2008年7月号

意味のわからない、でも中途半端に説得力があるようなないような推理はとってもいつもの舞城さん。
名探偵本郷タケシタケシ、とかね。

倉の中の学の言動がやりたい盛りの中学生すぎてめっちゃ笑えた。
頭の中で思考巡らして根拠はないにしろ可能性としての推理を行ってはいるんだけど「俺とセックスすることで命助かるかもよ?」ってオイオイw
まぁでも、八木千佳子はアイドルみたいに可愛いらしいし、しょうがないよね!男の子だもの。しょうがない。
毎回思うことだけど、福井弁の女の子めっちゃ可愛い。ちょっときっついカンジするけど。そこがまたイイ。
というか福井弁に限らず、方言ってイイよね。

あのキスが本当にイキルキスだったのか、それともただのキスだったのかはわからないけど、本人がそう思ったのならそれは思った通りのことなんだろう。
だってなんかイイじゃん、そういうの。

そのままにしておくことの価値。
っていうのがこの話のテーマかなって。
いや、それだけじゃもちろんないだろうけど、自分はそう読み取ったという話。


鼻クソご飯 「群像」2002年12月号

うおおおっ!まいじょーっ!!って感じの話。
とにかくひたすらセックス&暴力、そして愛。
ガンガンガンガン叩きつけられるような文章が気持ち良いったらない。

まず、冒頭の2ページ、鼻クソのくだりに爆笑した。
この2ページだけで何回「鼻クソ」が出てきたことやら。今度暇な時にでも数えてみよう。

セックスで精液を見る度やりきれない怒りの捌け口として、殴られ蹴られボコボコにされるサクラの献身的な態度も、普通だったら「いや、そこまでやられたら流石に逃げ出すだろう」と思ったりもするが、舞城作品だとすんなりと受け入れられてしまうという不思議。

刑務所内で自分の睾丸を潰したり、自殺を図るも失敗したり、雅仁は考える。
弟を殺した男とサクラを犯す俺を衝き動かしていたものは同じだったのでは?
それは性欲だけではなかったはずだ。
それが愛だったら良いし、愛であって欲しいし、きっと愛であったと思う。

許し、諦め、生きる。
そうやって、これからも鼻クソご飯をおかわりしていくんだろう。
彼も、そして私も。

セックスすること、愛すること、生きること、人間が好きな全ては、結局のところ鼻クソご飯だ。子供が鼻クソを好きになるのと同じ衝動が、俺たちをセックスや愛や生きることの全てに駆り立てる。

この短編集の中でもすごくお気に入りの一作。


パッキャラ魔道 「群像」2004年5月号

わけわかんないしっちゃかめっちゃかな話だけど、面白い。
面白いんだけど、感想難し過ぎる……今更だが。

波乱万丈と言ってもいい展開の末の父親のスピーチが沁み渡る。
弱いように見えるけど、これってつまり、強いってことじゃないかってことですとか楽しいって思えないけど、楽しいよな?とか、そうだよなって。
みんななんかしら辛いこととかあってでもそれなりに一生懸命生きてて苦しくて笑えなくても頑張ってそんなの楽しいわけなんかないんだけどやっぱり楽しかったりするんだよなーってなんか悟ったようなことを言ってるけど適当に文章打ってるだけでそんなに深く考えてるわけでもないけど人生ってそんなもんな気もしているのは本当でつまるところつまらないのが現実ってもんででも時々事実は小説より奇なりな面白いこととかもあったりしてそんな中で生きて死んでいけるんだから少なくともそれが出来ない人よりは幸せなのかもしれないなと思うこともある。

恥ずかしながら、歌詞を間違えてるってどこが間違ってるの?って思った。
「パッキャラマード」じゃなくて「パッキャマラード」だったんだね……。
いや、別に間違えて覚えていたわけではないんだけど、あやふやだった。意識したことなかった。
調べたところ「パッキャマラド」は「みんなで仲良く歩こうよ!」みたいな意味なんだそうな。
改めて、すごい歌詞だな、と。
以上、どうでもいい話。

みんなこういう場所のこういうタイミングにはそれがふさわしいからそうしていただけで、それは楽しい空間を演出してみせたんだろうけど、でもそこにあったのものは現実から乖離した偽物だっただろうか?っていうと、そうじゃなくて、これはそのときその一瞬にしか存在しない、まやかしめいた本物だったのだ。人生の本当は、嘘も偽物もひっくるめて飲み込んで全部合わせたものなのだ。

ピコーン!ときた。
ここだけ読んでもあれなんだけど、とにかく自分は閃いた。びびびっと。



なんで舞城作品の感想に挑戦したんだろう……と思いますが、この本を読んでとにかくなんか書き残しておきたい衝動に駆られたからだと自己分析しておきます。
思いっきり余談なんですけど、今『ドグラ・マグラ』を読んでいてそれが全然読み進まない中、久しぶりに他の本を読んだので読みやすい読みやすい、スラッスラページが進んでいくのが快感でした。
舞城さんのこの目が覚めるような疾走感溢れる小説はやはり痛快です。
頭の奥の普段眠っているような部分が覚醒するような、そんな感覚を味わえます。

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Comments

舞城さんの感想を書いてくださって、私としては大変参考になりました。感謝感謝です。
しかし本当に、天野寂さんは好奇心が旺盛なお方だ。舞城さんの感想に手をつけるなんて……。

今回も随分と面白そうですね。短編集は大好物なのでぜひ手に取ってみたいと思います。
まだ読んでいないので記事の続きはすっ飛ばしてます。なのでコメントは手短になってしまいますが、とりあえず表紙に惚れたぜ! とだけ。
Posted at 2010.08.20 (23:37) by つかボン (URL) | [編集]
Re:つかボンさん
参考になりましたか?それはどうもです。
いつまでも好奇心は旺盛でいたいですね。
生涯、少年の心は失くさずにいたいです。というわけで死ぬまでジャンプは買い続けますよ、はい。

舞城さんでお腹一杯に出来ますよ。特に鼻クソご飯が最高でした。
写真では分かりませんけど、ハートの部分と小さな○は切り抜きになっていてまたお洒落なカンジです。最近こういう表紙よく見かける気がします。
書店等で見かけましたら是非、現物を手に取ってみてください。
Posted at 2010.08.21 (00:31) by 天野寂 (URL) | [編集]
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