ZOKURANGER 森博嗣 感想

研究環境改善委員会のメンバは五人。
入れ替わりはなし。ずっとそのまま。ユニフォームの色も、決定済み。
正義の部隊が噂になれば、悪事の抑制になる。訓練は怠らない。我々は人類の夢の上に成り立っている。


でも、これを着て、人前に出るのは……、かなりどきどきする。


ZOKURANGER (カッパ・ノベルス)ZOKURANGER (カッパ・ノベルス)
(2010/08/19)
森 博嗣

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なんなんだこの表紙は。
書店でふと目に入ったが最後、なんだか正体不明の可笑しさが込み上げてきた次の瞬間、何故か自宅に戻っていた私はいつの間にやら鞄の中に入っている本書に気づく。
まさか、無意識のうちに万引きでもしてしまったのかと心中が蝉の羽ばたき程度に粟立つが、財布の中身はちゃんと残額が代金分減っているし、少しよれよれになったレシートも確認できた。はぁ、良かった一安心一安心。アイシンクアンシン。してる場合じゃないぞう。ってしてる場合でもあるが、そんなことより何だったっけ?そうそう、読み終えたのだ。買ったのだから当たり前である。なんたって本なのだから。それ以外の使い道はまぁ、あるにはあるがあまり一般的とは言えないのでここでは触れないでおこう。買っても読まずにそのままにしておくことも多い(俗に積読である)が、今回はすぐに読んだのである。これにはもちろん確固とした理由があるわけだが、ここで特に書くような大層な動機があるわけでもなし、同じくノータッチに留めておく。中々、本題に入らないな。そもそも、本題が何かを私自身が明確どころか朧気にさえ定めていないのだから、入り得ろうはずもない。
と言いつつ入ることにする。
読み終えたのだから感想である。当たり前である。いや、当たり前ではない。
本を読んで感想を抱く。まぁ、ここまでは多くの人がその通りではないかと思う。そもそも本を読む人が少数派ではあるが。どこそこがこうこうこう言う理由でかくかくしかじかだった、と詳細なものでなくとも、大なり小なり、面白かった、つまらなかったぐらいは思うのがまぁ、普通だろう。
そこからさらに一歩、いや三歩ほど踏み出し、自分の感想を文章に起こし、インターネットを通じて不特定多数の人間に向けて発信する行為は、はっきり言ってかなり特殊な性癖の持ち主の所業と分析できる。
そんな不思議の国のアリスな私が今回お送りするのは敬愛する森博嗣氏の小説『ZOKURANGER』である。
そんなことは記事タイトルを見れば分かるという人の為ではなく、もしかしたらまだ分かっていない、絶滅危惧種に分類されるべき人の為に届くかどうかも怪しいが、蜘蛛の糸、一縷の望みを懸けて、一応添えてみたメッセージめいたものであることをここに付記しておく。
今回はネタバレといったものは多分、ないので未読の方も安心して読めるような気がする。
というのも本書にはそもそもネタバレ出来るような内容が無い。在って無きにしが如くである。文法的に合っているだろうか。ともかく、内容と呼べるような内容は無いと言って良い。
説明するのは非常に混迷を極めるのでその前にこのシリーズの概略を語ることとする。
そう、シリーズなのである。
俗にZシリーズと呼ばれる『ZOKU』『ZOKUDAM』に続く三作目にして完結巻となるのが本書『ZOKURANGER』である。
まぁ、シリーズといっても話は全く繋がっておらず各々独立しているから、どれから読んでも大丈夫であるし、どれを読まずとも、もちろんなんら問題はない。
じゃあ何故シリーズなのかと言えば、子供の頃夢見た空想は現実的にやろうとなると如何に馬鹿馬鹿しいことになるのか、というテーマと呼べるのかはともかく、そんな主題めいたものが一貫していることが一つ挙げられる。
もう一つは登場人物の名前、大まかなキャラクタ、年齢といったものが共通していることである。
分かりやすく噛み砕いて言うならば、パラレルワールドみたいなものだと解釈してもらって構わない。
初めからそう言えよという意見に対しては、全くその通りだ、と返す他ない。
ちなみに本作は随分前にハードカバで既に刊行されており、今回私が買ったのはそのノベルス版である。プチ情報である。
そして私はこのシリーズを二秒ほど前からこう呼んでいる。
珍妙奇天烈摩訶不思議脱力系リアリティ小説
自分で考えておきながらなんだが、長い。長すぎるなこれ。もっと短く簡潔に出来なかったのか、といっても仕方が無いので賢明な私は口を閉ざすことを選んだ。
いや、面白いのだ、これが、本当に、もうべらぼうに。ソォシュール!
べらぼうにというのはいささか誇張が過ぎるかもしれないが、なんというか身体中の力という力が全て風船の空気のように抜けていくというかなんとうか、そんなかんじなのである。声を出して爆笑とかではない。本を持つ手の握力も維持出来なくなるような、ふにゃふにゃな笑いに襲われる。ふはぁーーーーーーである。たれぱんだ の如く緩み切る。へにゃへにゃのダルンダルンだ。
そろそろこの文章にも飽きてきた人もいらっしゃるのではないだろうか。さようなら。
(性懲りもなくつづく)

Part1 Yellow disloyalty 第1話「黄色の背信」


民間企業から大学へ准教授として赴任してきたロミ・品川は研究環境改善委員会の委員に任命される。
初参加の委員会は特にこれといったこともなく終わるのだが、後日、同委員会のメンバ、長良野乃助教が尋ねてくる。曰く、ユニフォームを作るのでサイズを測らせてもらいたいのです。
え?ユニフォーム?なにそれ?なにがなんだかわからない。
とにかく、メンバは全員お揃いのユニフォームを着るらしいのだが……。
その場はとりあえず、彼女に従うことにするロミ・品川。
そして、後日。ユニフォームが出来たので試着して欲しいと言われ、向かった先に待っていたものとは。
なんというところだ、大学って……。


表紙を見た瞬間にこのイエローはロミ・品川だというのは一発で分かった。
シリーズ通して唯一の常識人といってもいい彼女だが、その振り回されっぷりがもうなんか気持ちいい。
相変わらず、このなんとも言えない力の抜け切った文章が堪らない。

ロミに幸あれ、すっげー幸あれ!

Part2 Pink excitation 第2話「桃色の励起」


若くして助教となった長良野乃は新しく研究環境改善委員会メンバとなったロミ・品川に近づくべく入念な妄想、もとい計画を企て、実行に移す。
まずは委員会の仕事と偽り、一緒にユニフォームを着て写真を撮るとしよう……。


まさか、野乃が百合娘になっているとは……驚きびっくりこんにちは。
揖斐にお熱(死語?)なイメージが強烈に焼きついていたから、ロミに近づく彼女を見て、ん?と疑問符がポンポンと浮かんだのだが、まさかのまさかであった。
いやいやまったく、妄想逞しい娘さんだこと……私もまだまだ精進しなければ。
妄想とはかくあるべき、ディティールは凝っていればいる程良いのだ。

Part3 Blue idleness 第3話「青色の有閑」


ケン・十河のマイブームはロールプレイィングゲーム。
彼は研究環境改善委員会で長良野乃と出会い、射抜かれる。
彼女こそ、運命のパートナに違いない。
いずれは二人でダンジョンに挑み、新たな冒険に旅立つことになるだろう。
だが、まだその時ではない。まだ、彼女に気付かれてはいけない。慎重にならなければ……。


十河がこんなにインテリジェンスなキャラになってるのがなんか新鮮。でもやっぱり十河は十河。
こいつも妄想ハンパねぇな。
妄想と現実がごっちゃになる、というとマイナスなニュアンスになりがちだが、現実を妄想に近づけていくことはむしろこれ以上なく人間的な行いではないだろうか。
妄想も理想も空想も結局は同じである。
それを目指すこと以外に人間の生きる目標はない。
ここで誤解して貰っては困るのが、妄想といっても現実の人間に被害を出すような行為は厳禁である。当たり前だ。
逆に言えば、誰に迷惑かけるわけでもない妄想はそれすなわち、マイジャスティスなのである。

Part4 Green persona 第4話「緑色の位格」


研究環境改善委員会のメンバの一人、バーブ・斉藤は特殊な能力を持っている。
人の未来を見ることが出来るのだ。
しかし、そんなことを話しても信じてもらうどころか誰にも相手にされない。
そんな時、ひょんなことから自分と同じような能力を持った女性と出会う彼だったが……。


相変わらず、勿体ぶった物言いがもう一周して心地好いぞ、バーブ・斉藤。
ただのスケベオヤジなのかと思いきや、紳士な振る舞いを見せたり、でもその実やはり変態紳士だった。
妄想妄想また妄想。もう何が妄想で何が現実に起こってることなのか分からなくなってくる。もうそういうふうになってくる。妄想こそ、アイデンティティ。

Part5 Red investigation 第5話「赤色の研究」


未だに研究環境改善委員会の目的が分からないとロミ・品川から相談を受ける揖斐純弥准教授。
なんだかよく分からないうちに全員集合した彼らはとりあえず、たこ焼きブレイク。
なんやかんや合った末、研究科長の元へ、直談判しに赴く五人であった……。


揖斐だけは大丈夫だと信じてたのに……。
まさかまさかのまっさかさま。
先のバーブの夢とクロスオーバしながらも少しずつ違って、結局なんだったんだ?という思いも泡沫の虹のように、ほらあの空に……。
そして、揖斐ロミとはこれまた……おめでとう!ロミさんにもやっと春が来たね。
話変わって、表紙のヘルメットから煙出してるのカッコイイ。
それから、この登場人物達、ほとんどが想定内の出来事過ぎる。どんだけ想定しているのか、少し気になった次第。



舞台となる大学の描写がリアルでそこがまた面白い。
まぁ、誇張している部分もあるだろうが、本当に大学というのは変わったところなんだな、と。
ここら辺は森氏だからこそといっていいだろう。
この馬鹿馬鹿しさにあっぱれ。シュール万歳。

掴み所のない話だが、そこがいい。
読み終えた後、脱力しきった自分の身体と弛緩しきった心地よさ、ただそれだけが残る。

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Comments

ZOKU読んだ事あるよ

すごい、世界観だよね。
Posted at 2015.03.22 (16:45) by 消極ピエロ (URL) | [編集]
Re: 消極ピエロさん
はじめまして、コメントありがとうございます。

とてもユニークなシリーズ(というほどの繋がりはありませんけど)ですよね。
Posted at 2015.03.25 (20:01) by 天野寂 (URL) | [編集]
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