19 ―ナインティーン― 感想

いるまんとその他4人の作家が織りなすメディアワークス文庫創刊1周年記念企画アンソロジー、『19 ―ナインティーン―』の感想です。
19―ナインティーン (メディアワークス文庫)19―ナインティーン (メディアワークス文庫)
(2010/12/25)
綾崎 隼、紅玉 いづき 他

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神様って意地悪だ――。だけど……。
19 ―ナインティーン―

綾崎 隼・入間人間・紅玉いづき・柴村 仁・橋本 紡


 成人すると同時に下方面の大人も迎えようという、最高に下らない決意と熱意を秘めて、ここまで戦ってきた。/地上には人々の想いが溢れているのだ。それってすごいことだよね。ああ。胸糞悪い。/「ふーん。じゃあ、お金を借りたお礼に、あたしがあんたを変えてあげよっか?」/頑張れば、出来るって思ったのは一体誰だろう?/好きな人と手を繋いで、キスをして、抱き合って、求め合う。ぬくもりを感じる。それのどこがいけないのだろう。
 19歳をテーマに、5人の人気作家が描く、彼女彼らの物語。
 メディアワークス文庫創刊1周年記念企画作品。


読み終ってからこのあらすじを読むと、ちょっとこれはどうなの?と苦笑が漏れる引用センスでした。
それはともかく、一応ネタバレありなので注意してください。

入間人間『19歳だった』

2010年12月25日を描いたこの物語をギリギリ2010年12月25日に読むことが出来てとても嬉しかったです。えへへ。
全体で300ページにも関わらず、一人で100ページ近くも占領しちゃういるまんマジ大胆不敵。
3分の1は頂いた!なアンソロジャックぷりが最高です。しかも先陣任されちゃってますし!
著者紹介でも『人気作家』って書かれてますもんねー!

閑話休題。

そろそろ内容の方に入っていきたいと思います。
と、その前に今回も登場人物(といっても「主な」は二人しかいないのであまり困りませんが)の名前がないので勝手につけちゃいたいと思います。
まず、ヒロインの彼女は『写メ子』ちゃん。これは何の問題もないと思います。
続いて、主人公であるところの彼、なんですがすごく悩みました。
12/26が誕生日なのでイブの反対語があればそれがいいなと思ったのですが、後夜祭って英語はないみたいなんですよね。
かなり考えても良いのが浮かばなかったので、もう後夜祭の頭からとって『コウヤ』に決定しました。
という訳で以下、『コウヤ』及び『写メ子』と呼んでいきます。

ジャンルとしてはループもの。
エンドレスエイトが例えに出されてたりしました(多分、そうだと思います)
正直、ループものとしてはそこまで面白くはありませんでしたが、そこに重きを置いている感じでもありませんでしたからね。
今回も▽(横向き三角出なかった……)びっしり、数字びっしりやら途中からの上下二段構成など実験作的な匂いがぷんぷん漂っていました。
追記:上下二段構成ページは2通りの読み方ができるようになっています。
上段は初回、ループ前と同一の流れ、下段はループを繰り返すことで可能になった流れになっており、これらを続けて読むことで19回のパシャリとなるようになっています。いるまんスゲェ!

でも、意識だけじゃなく身体まで一緒に巻き戻るのは新しいですね(他にもあるのかもしれませんけど)
風呂に入らないと汚くないかなとかそんな細かいことはいーんだよ、ですね。

んで、コウヤくんと写メ子ちゃんですけど、やっぱりこれまたバカップル。
いいイチャイチャっぷりです。
この二人はあれですね、名付けて『写メップル』ですね。いいぞ、もっと撮れ。

写メ子ちゃんは途中まではぽわぽわーっとしたどっちかっていうと垂れ目な女の子を想像していたのですが、吊り目だということが明らかになってからは「見た目は吊り目。中身は天然天使。……アリ、だな。いや、全然アリ!ギャップ萌えキタコレ!」と一人祭り状態でしたわっしょいしょい。
吊り目な美人で性格これって……最強過ぎるだろ!
コウヤ絶対に離すんじゃねぇぞ!幸せにしろよ!絶対だぞ!

コウヤくんは……『童貞』パワーすげー!!
彼は迸る童貞でした、ほんと。
童貞が全裸でやってくる。には全力で吹きましたとも。
でもやっぱり一途の中の一途で彼女ラブ!ラブッ!!ラァブッッ!!!なイルマニックヒーローで、好きになるのにそう時間はいらなかったですよね(何を言い出す)
行動も変態入ってるしね。黄鶏症候群ですな、うむ。

バカップルぷりも忘れちゃいけないニヤニヤ要素。
がっぷりよっつと(ほうようだー)
プロポーズにトレード発言(さいていだー)
背中を流しっこしよう(ごしごしだー)
エロイこと、しない?(ちょっきゅーだー)
どれもこれも、ごちそうさまでした。激甘。

舞台はなんだか最近頻繁に出てくる名駅でしたね。
金時計、銀時計、高島屋、驛麺通り等々、聖地巡礼に精が出せるというものです。
もしかして、割烹料理も探せばあるのかな?
クリスマスシーズンの名駅のイルミネーションは本当に綺麗です。まぁ、最後に見たのはもう数年前に遡らないといけませんけど。
そして、カップルもうじゃうじゃいるので独り身の方には厳しいスポットでもありますね。
自分は気にならない人間なので大丈夫なんですけど、それより人混みがハンパないのでそっちが無理だったりします。

閑話休題。



何度となく繰り返される十代最後の夜を越えて。
大人の階段をまた一つ上がる。
一皮剥けられなかったけれど。
そのおかげで辿りつけた今がある。
きっとこの先。
幸せな『これから』が待っているから。

このぽかぽかな気持ちになれる余韻が気持ちいいナァ……

柴村仁『×××さんの場合』

何がどう面白いのか全く分かりませんでした。
正直、つまらなかったです。
特に神話に準えている意味はあったのでしょうか。
『プシュケ』からなる三部作は非常に素晴らしい作品だったので、期待していたのですが……残念でした。

綾崎隼『向日葵ラプソディ』

でんげきったーの作品等を除けば、初めての綾崎作品。
読み終っての率直な感想は『すっげーラノベっぽい。てか思いっきりラノベじゃん』でした。
評判やあらすじからもっと一般小説寄りの文章を書かれる方だと勝手に思っていたので、このコテコテのラノベっぽさは意外でした。
設定もその後の展開もどこかで見たようなもので目新しさはなく、期待はずれ感は否めません。
今回は意識してこういう風に変えられたんでしょうか?
他の作品を読んでみないことにはなんとも言えませんが。

紅玉いづき『2Bの黒髪』

予備校に通う浪人生、仁沢須和子、十九歳。
頑張れば出来る、そんな情熱もすぐに冷めてしまって、おざなりに時間を消化していく日々。
やる気もやることもなくなんとなく暇つぶしにノートの余白に書き始めた落書き漫画。
誰かに見て欲しくなって、ブログを立ち上げなんとはなしに連載を始めて……。
特に何が起きるわけでもなく、淡々と彼女の日々を綴った静かな作品。

このままじゃダメだと分かってる、けど頑張る気にもなれない、そんな煮え切らない毎日を過ごす中で、落書きから生まれた『ハルカ』の物語。
誰かが見てくれる。褒めてくれる。それが逃避だとは分かっていても、心休まるひとときがそこにはあって。
不安や焦り、怠惰や諦観、そんなものが綯い交ぜになった様な彼女の気持ちが、過去に自分が抱いていた、今も抱いているものと被って、非常に細かいところまで共感させられてしました。
燻った心理描写がとてもリアルで、他人事とは思えないくらい感情移入してしまいました。

疲れたなぁと思った。なんにもしてないのに。なんにもしないことは、どうしてこんなに疲れるんだろう。

この一文は特に秀逸だと思います。
どうしてこんなに疲れるんでしょうね。

ブログをやっていて一番嬉しいことって言ったら何かって言ったらそれは「いつも楽しみにしています」とコメントを頂くことなんですよね。
初めてそういうコメントを貰った時、めちゃくちゃ嬉しかったことは今でも覚えてます。
それもあってか、彼女が喜ぶ様が容易に想像出来ました。
共感するうえでこの部分も大きかったかなって思います。

持つ者と持たざる者。
彼女には才能のない人間に必要な、そして何よりも欠けている努力が一番足りなくて。
なにかしなくちゃ。なにかにならなくちゃ。
なにかに、ただ生きたものに、なる前に。

最後のけじめとして、涙で顔をぐちゃぐちゃにしながらも、笑ってくれと願い、描いた『ハルカ』。
不細工だけど、下手くそに笑っていて、綺麗に泣いていて。
きっと『ハルカ』、そして彼女も。
この先、なにかになれる、なっていく。
そんな二人の未来を想像し、なんだか温かい気持ちになって思わず微笑んでしまう、素晴らしい作品でした。文句無しの傑作です。
自分からも『おめでとう』という言葉を贈らせてください。
そして、『ありがとう』を。

橋本紡『十九になるわたしたちへ』

読み始めて、「あれ、これどっかで読んだことある。デジャヴ?」と冒頭に戻りそうになりましたが、確かこの『1993 M』は電撃文庫MAGAZINEの何号かに載っていました。
それに二人の視点を追加している感じですね。
内容に関してなんですが、電マガで読んだ時も好きな雰囲気だなぁと思っていたのと同じく、短いながらも大切なことが綺麗にまとめられている、好みなお話でした。
上手く言葉にして思いを紡げないのですが、作品を通して流れる空気がとても澄んでいて、素晴らしい短編だと思います。

「わたしは今、ここにいるんだよ」

このセリフに全てが凝縮されている気がします。素晴らしいです。

いつまでも一緒にはいられないかもしれない。
どこまでも一緒には歩いていけないかもしれない。
だけど。
いられなくなるときまでは。
歩いていけるところまでは。
こうやって手を繋いで。
進んでいこう。
歩いていこう。
そうやって大人になっていこう。





良かった作品を順に並べるとすれば、上から
『2Bの黒髪』
『十九になるわたしたちへ』
『19歳だった』
『向日葵ラプソディ』
『×××さんの場合』
となります。
いるまん大好きっ子だからって贔屓はしません。
この中の短編だったら、紅玉さんのが飛び抜けて良かったです。

そういえば、アンソロジーだからあとがきがないんだよなぁ……としょんぼりしましたが仕方ありません。
みーまー10まで後2週間。
泣いても笑っても、その日は必ずやってきます。
それまでには覚悟を決めて、臨めるようにしておかないと。

それでは最後に。
いるまん、紅玉さん、橋本さん、素敵なクリスマスプレゼントをどうもありがとうございました。

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Comments

今のところまだ、『19歳だった』を読んで止めてるのですが感想読ませてもらいました。と言っても、『×××さんの場合』以降は軽く流し読む程度ですが。

いるまん、今回も挑戦してくれましたね。
携帯にループとくれば否応なく『携帯電波』が思い出されたのですが、いるまんがSF(少し不思議)ものを書くのは珍しいですよね。いえ、今までの作品も大体どれもSF(少し不思議)なんですけど。
バカップルさが堪らんでした。私も25日に読んだのでうきゃー! となりましたが、こんなバカップルならぜひ近くで拝みたい。
素敵なクリスマスプレゼントでした。

今回のアンソロジーは、参加してる作家陣がみんな好みの作家さんばかりでした。ただ、橋本作品は半月を所持してるにもかかわらず一度も読んだことがないのですが。
実際読んでみないとわかりませんけど、柴村先生の話が面白くなかったというのは、プシュケ3作品に魅了された一人としては非常に残念です。
綾崎先生の話ですが、当初編集に出した作品案は二つあったみたいです。そのうち一つは色々と調べものをしたりして長い時間かけて書いたらしいのですが、採用されたのはそんなに時間のかからなかったもう一つの方、つまりこの『向日葵ラプソディ』だったとか。本人のブログからの情報です。
普段MWで出してる著作はもっと一般寄りなので、あまり薦めると天邪鬼な天野寂さんは読む気が失せるかもしれませんが(悪意はありません)、気が向きましたら読んでみてください。

それでは、そろそろ続きを読み始めようと思います。
Posted at 2010.12.27 (12:43) by つかボン (URL) | [編集]
Re:つかボンさん
挑戦というか実験というか、相変わらず色々と試してますよね。
『携帯電波』浮かびました浮かびました。
『携帯電波』と比べるとやっぱり見劣りしますけど、イチャラブ要素がそこら辺は補ってくれました。
同じ日に読めたっていうのがまた嬉しいですよね。
年号までピンポイントで指定してくるなんて……買えなかった人は残念ですけど、立ち会えた身としてはただただ喜びの嵐です。不変性なんて知りません。
今年はサンタクロースが全裸でやってきました。

橋本さんの話良かったので、ちょっと半月も読んでみたくなりました。
今ならハードカバー版も出てますしね。
プシュケシリーズは本当良かったですもんね。
でも、これを読む前にプシュケを読んでて良かったなぁと前向きに考えようと思います。
これが初読み作品でなかったことは不幸中の幸いでした。
そういうことだったんですね、ブログも確認してみました。
それによればこの話も微妙にリンクしているらしく、今回の舞原さんがそれっぽいですね。
よく自分の性格を御存知でいらっしゃる(笑)
ですが、実は『蒼空時雨』を未読ですが買ってあるので、読んでみるつもりです。
楽しめると良いのですが。
Posted at 2010.12.28 (16:00) by 天野寂 (URL) | [編集]
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