時間のおとしもの 感想

記念すべき入間人間さん初の短編集(シリーズものは除く)『時間のおとしもの』の感想です。
そして、こちらは記念すべきかどうかはわかりませんが当ブログ記事番号300番目の感想となります。
まぁ、無理矢理調整したんですけどね(オイ

『時間』は気まぐれな性格で、ふとしたときに『奇跡』を運んでくれる。
時間のおとしもの

otosimono.jpg

『携帯電波』――少女が台所で偶然見つけた携帯電話。耳を傾けた向こう側には、もう一人の自分がいて……。
『未来を待った男』――この時代にタイムトラベラーを呼び寄せる。それが男の目標だった。『やり直したいことがある』のだという。そして、ついにその時が訪れる。
『ベストオーダー』――四人の俺が、同じ場所に現れた。自分自身が複数いるこの状況を前に、俺達四人はしばし考えた後、全員で共謀し、『完全犯罪』を企てる。
ほか、書き下ろし短編『時間のおとしもの』を含む、時間に囚われた人間たちの、淡く切ない短編集。

ネタバレのおとしものにご注意ください。
『携帯電波』、『未来を待った男』、『ベストオーダー』に関しては過去に書いた感想へのリンクを貼ってありますので、そちらも合わせてお読みください。

あとがき

今回も順序を変えてあとがきから。

自分も好きです、『失はれる物語』。

やっぱり出ますよね、よかったよかった。
『片目と失恋(仮)』楽しみにしてます(まだ(仮)なんだ)
いるまんも自分の過去作品読んで恥ずかしいとか思ったりするんですね、ちょっと意外かも。
いやまぁ、それが普通なのかもしれませんけど。
う~ん、下手かなぁ?
文章の善し悪しなんてわかりませんが、デビュー時のいるまんの文章、自分はとっても好きですよ。大好きです。
『携帯電波』はほとんど新作みたいに書き直されていましたが、前の方がずーっと好きです。
デビュー作、つまり『みーまー』もたとえ時間があっても書き直さないでほしいです。
あれはもう誰にも、今の入間さんにも書けないと思うから。
あのときの入間さんだからこそ書けた物語で、あのときの入間さんにしか書けなかった物語だと思うから。
五年前の入間さんと現在の入間さんは繋がっているけど、どうしようもなく別人でもあって。
あの日から変わらないものもあれば、あの日から変わってしまったものもあって。
そのどちらも愛しくて。
そのどちらも大切にしたいから。
過去の入間さんの作品にあまり手を加えないでって思ってしまうのは、自分のわがままなんだろうなぁ。
こんな性格ですから、電マガやまるごとは一生捨てられそうにありません。

以前にもこの記事などで言っていましたが、やっぱり『アイで空が落ちてくる』は収録される予定だったんですね。
うぅむ、納得いきませんな。
地震があった後ならいざ知らず、あの短編が掲載されたのはそれより前じゃないですか。
まぁ、あの短編の直後と言ってもいいぐらいのタイミングで地震があったときは「いるまん、まさか予知能力者!?」などと不謹慎な考えが頭を過ぎったのも事実ではありますが、不謹慎不謹慎と過剰に成りすぎるのも如何なものかと。
1冊の短編集として考えたとき、『アイで空が落ちてくる』を含めた全五編にするのがそれこそ“ベストオーダー”だっただけに残念でなりません。
いるまんの言う通り、時間を開ければオーケーというのもおかしい、まったくおかしい理屈です。
大人の事情とか糞食らってください。
思い留まってくれてありがとういるまん。
そんなポジティブリメイキングはこれっぽっちも望んでいませんぜ。
有料でも構わないので、公式サイトかどこかで掲載されることを切に願っています。

いや、そんなに意外じゃねーだろ!
むしろ、どしどし来ちゃうでしょ!
自分の知名度、見くびりすぎじゃない?
あなたもう結構有名人さんですよ!(天野談:信憑性は低い)

そんなに仕事のメールが欲しいんですか?
送っちゃいますよ? 送っちゃって良いんですか?
報酬とかなきに等しいですけどそれでも良いんですね?(そーいうのは仕事とは言わない。ボランティアって言うんです)

いるまんwww
マグロご期待してますwww どーんwww

携帯電波

うおっ! ほぼ書き直しじゃん! びっくりしました。
上でも書きましたが、電マガ&まるごとに掲載された『携帯電波』の方が断然好きです。
全体的に角が取れてまぁるく、やわらかくなっちゃったなーと。
前の尖った、キビキビしたところ好きだったんだけどなぁ。
原材料のまんまなスパイスの利いたカレーに牛乳ドボドボ入れてマイルドにしちゃった感じ。
同じカレーはカレーなんだけど、味付けが違いすぎて別料理のように感じました。
あと、無駄な文章を省いてシェイプアップしすぎ。
無駄な文章がいいんじゃないですかー、わかってらっしゃらない!
一見無駄に思えるその隠し味が何よりの調味料だというのに!
最近のいるまんは無駄な文章がなくすっきりしてきていて、それはそれでもちろん良い変化ではあるのですが、無駄な脂がギトギト乗ったこってり文章が無性に読みたくなっちゃうこともあるんですよ!
あぁ、そうだよ、わがままだよ! 文句あるか!

庭さんのイラストですが、「こんなの電波ちゃんじゃない!」と叫びそうになったのはナイショです。
イラスト自体の出来は申し分ないのですが、おかっぱやないやん! そこいっちゃん大事なとこ!
ぎん太さんのイラストが載らないのはしょうがないとして、そのイラストくらいは参考にしてほしかったです。
ていうか、みーまー8でおかっぱって描写あったはずなんですけどね。
そこらへん、編集さんがしっかりしてくれないとなぁと思いました。
入間さんだけに付いているわけでなく、大変なのは分かりますけど。
あと、抱えてる箱もあんまり立方体に見えませんし。丸い缶に見えます。

以下、書き直しに伴い変更された設定や描写の削除などで気になった点をいくつか挙げてみます。

種島くん直伝・ふれきしぶるが消えている…だと…!?
クロスオーバーにも絡んでくる大事な要素じゃないですか!!
企画ものをそうじゃなくしているので箱に刻まれた英語のくだりは省く必要があるのはわかりますけど、それなら他のところでふれきしぶるは入れて欲しかった! 欲しかった……
びゅーちほが健在なのがせめてもの救い。

電波ちゃんの成績が悪くなってる!?
頭ぐるぐる回って成績はぐんぐん伸びてたはずなのに!
今更、頭良いイメージは抜けないですよ!

おひょひょ星人になってる!?
なんだよ、おひょひょって!
アンテナバリ3のエレクトリカルパレードな毎日送ってたんじゃなかったのかよ!
このフレーズ何気に気に入ってたのに削られちゃってたじゃん! おひょひょ!

追加された“久しぶり”

「もしもし、私? ひさしぶり。
 わたしなんだけど」

一単語追加するだけで、かなり印象が変わるような気がします。

お母さんが生きているっぽい?
戻った世界では既に死んでいたお母さんが、書き直しでは生きている?
生きているとしたらめちゃくちゃややこしいことになりそうな気が……。

まるごとカットされた段落などもあり、電波さんがどれだけお母さんのいる世界に戻りたかったかがあんまり伝わってこない気がしました。
これだけ端折られると、どうしても薄くなったように感じてしまいます。

改めて読み返してみて思いましたが、ラストの微笑んでいる女の子は確信犯ですよね。
やっぱり入間作品の中でも飛び抜けて、ホラーな話だと思います。

未来を待った男

ほぼ雑誌掲載時のままだったと思います。
微妙にイチゴがラディッシュに変わってて、いるまんが背伸びして英語使っとる、とか思ったりもしましたけどね。野菜だもんね。

庭さんの瀬川イラスト、ちょっとイケメンすぎる気もしますが、雰囲気が三四郎っぽくて中々イイです。
某オカリンに似てる気もしますが。それは大体白衣のせい。

非常に残念なことに落丁というか台詞の抜けがありました。

P131「明日死ぬって……容体が悪いのなら、入院されてはいかがですか?」

という瀬川の台詞の前に

「明日にでも死にそうな老婆の願いだ、聞いておくと将来、いいことがありそうだろう?」

という老婆の台詞が抜けていました。
つまり、本来であれば

「明日にでも死にそうな老婆の願いだ、聞いておくと将来、いいことがありそうだろう?」
「明日死ぬって……容体が悪いのなら、入院されてはいかがですか?」

という会話になっているはずが、台詞の抜けのせいで会話が成立していません。
『昨日は彼女も恋してた』の“両校”といい、最近のメディアワークス文庫はこういったミスが多いように見受けられます。
作品と関係ないところで萎えてしまうのは非常にやるせなくも腹立たしくもあるので、もう少し気をつけてほしいものです。
追記:再版にて該当箇所の修正を確認しました。同じく、『昨日』の“両校”の修正も確認。

でも、この話はやっぱり大好きだなぁと改めて思いました。青春っ!

ベストオーダー

こちらも雑誌掲載時のままだと思います。
特に新しく語ることもないかなぁ。

時間のおとしもの

表紙のイラストが二人の中学時代、扉絵が現在の二人ってことですかね。
なんか顔がみんな一緒なのでいまいち判別しにくいです。
でも、イラスト自体はとっても好みです。

この女の子、吉田さんの小学生時代だったとは! ふはふれきしぶる!(こうなったら自分で使ってやる!)
おっきくなっても歩くの遅いまんまだよってほっぺぷにっとするついでに教えてあげたい。ぷにっ。
やっぱ今のなし。
「短足で悪かったなっ」が聞けないなんてもったいなさすぎるので、吉田さん、きみはそのままおっきくなってください。ぷにっ。
実は名前が出るまでドミノがまた家出でもしたのかな、と思ったりもしていたんですがどっこいところが短足少女でした。爺ちゃんって言うのも北本さんのことだろうと微笑ましのう、なんて爺さんごっこに勤しむ始末でしたよ。
いやしかし、どちらにせよかわいかったゆえまったくもってもーまんたい!
爺ちゃん大好きな吉田ちゃんかわいいよ吉田ちゃん。
タローと一緒に草葉の蔭から見守りたい(日本語は以下略)
守りたい、この笑顔。
でも、このくらいの子供の悪意のかけらもない「おじさん」呼びは結構ショック受けたりしますよね。
ここで認めたら心までおじさんになってしまうと意地になって訂正させるような、そんなどちらが子供かわからない大共にはなりたくないものです(目を逸らしながら)

地下鉄を降りたら時間が止まっていた、みたいな展開を予期しましたが、そんなことは全然なかったぜ。
表題作でありながら、この短編のみSF要素なしとは、いるまんは予想をことごとく裏切ってくれます。
でも、時間に捕らわれた人間、という意味では彼が一番相応しい気もして。
唯一、ノンSFな話であるはずなのに、収録作の中で最も現実感の稀薄な、まるで夢を見ているようなふわふわした不思議な読み心地は本当に時間が止まっているかのように感じさせてくれました。
脳内で再生される映像に色がなくモノクロだったのですが、単純で、簡単でよかったんだと気づいて見上げた景色が鮮やかに、それはもう鮮やかに広がっていく様は素晴らしかったです。

恋と呼ぶには淡い、特別な思いと、素直に向き合えず、ズレていってしまった後悔。
タイムマシンも超能力もない世界で、それでも時計の針は回っていく。
重なることのない針が、重なった気がして。
時間が止まればいいのになぁ。
















そして、針はまた、時を刻み始める。


邪推してみよう! のコーナー!
Q.彼女はどうやって時間を止めようとしたのか?
A.抱きついてキスした! 俺の時間は一瞬止まったはず。
 さすがに既婚者でそれはないかな、とも思いますが、ぱっと頭に浮かんだのはそんな光景でした。

Q.両手に結婚指輪?
A.咄嗟に思いついたのは未亡人説ですけど、『結婚している』って現在進行形だし、それはないでしょう。
 とにかく、パワー全開ってことですね!


というわけで、記念すべきいるまん初短編集だったわけですが、『携帯電波』がまるっと書き直されていたり、『アイで空が落ちてくる』が収録されなかったり、『未来を待った男』に台詞抜けがあったりと残念な点が多かったように感じてしまいました。
でも、書き下ろしの『時間のおとしもの』が素敵な話だったので充分満足しています。
いつか出るはずの『片目と失恋(仮)』が今からとっても待ち遠しいのです。

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Comments

天野寂さん、はじめまして。いつも作中でややこしい仕掛けがあるたびにお世話になっています。(笑)
『時間のおとしもの』自分も読みました。『携帯電波』と『時間のおとしもの』が未読だったんですがどちらも面白かったです。ただ確かに誤植等は残念でしたね。
あと、『時間のおとしもの』のラストについてですが、個人的には右手の指輪を男の指にはめようとしたのでは、と推測しました。でも指の太さ的に「書くまでもなく無理であった」のかな、と。ちょっと強引な解釈ですかね?(笑)
では、突然の書き込み失礼しました。
Posted at 2012.01.28 (20:43) by ヤギ (URL) | [編集]
Re:ヤギさん
はじめまして、ヤギさん。
コメントありがとうございます。

お役に立てているようで嬉しいです。
設定では『携帯電波』が頭一つ抜けていて、一番好きなのは『未来を待った男』かなぁといった感じですね。落丁は本当に残念でした。
その解釈もいいですね! いい、いいです! いいなぁ、それ。
強引さで言えば自分の抱キッスと同じくらいですけど、そんな展開も素敵ですね。
たとえ指にはまらなかったとしても、彼の時間は止まっちゃいますよ。
だってそれってプロポーズじゃん? ふは、ふれきしぶる!
とっても美味しい解釈、ごちそうさまでした。
よろしければまたお気軽にコメントしてくださると喜ぶと思います(私が)
Posted at 2012.01.29 (06:06) by 天野寂 (URL) | [編集]
天野寂さん、イルティマニアの管理人さんでしたね!このブログはお気に入りに登録して毎日見てるんですけど、知りませんでした。

電撃文庫Magazineの購読が今年まで不可能だった私的には短編集が出版されるのがとても嬉しいです。「片目と失恋(仮)」には茸姫とかも収録されたらいいな...

吉田さんって、ぼっちーズの登場人物でしたね。最近、円高のせいで日本から本を買うのが大変です... ぼっちーズは単行本なだけあって、3万ウォンですよ...(ふつう、韓国の単行本は1万2~3千ウォンです)。でも来月はちょっと節約して、お金貯めて、小規模な奇跡の単行本と買うつもりなんです!
Posted at 2012.02.03 (15:03) by enya (URL) | [編集]
Re: enyaさん
こちらでは、はじめまして。
コメントありがとうございます。

実はそうなんですよ!
お気に入り&エブリディとかすっごく嬉しいです。
ありがとうございますっ!

そういう方のためにも(そして自分のためにも)じゃんじゃん短編集出してほしいですね。
残念ながら『片目と失恋(仮)』には『茸姫』は収録されないんじゃないかと思います。
でも、私が一番好きな短編でもある『ひかりの消える朝』はまず間違いなく収録されるはずなので、お楽しみにっ!

途中までは大きなリュックでドミノだと思っちゃいますよね、吉田さん。
ということはenyaさんは韓国にお住まいなんですねっ!
なんというハッピーサプライズ! 外国の方からコメント頂くのは初めてだと思います(多分)
あ、でも、日本語完璧ですから、韓国在住の日本人って線も……?

閑話休題。

なんか急に円高の影響を身近に感じました。
通常の2倍超えですか……それはやりくりが大変そうです。
でも、enyaさんには悪いのですが、そこまでしてでも入間さんの本が読みたい! って方がいるってことを知ってめちゃくちゃ嬉しくなっちゃう自分がいます。
『僕の小規模な奇跡』も『ぼっちーズ』も超面白いので目一杯堪能しちゃってください!
あと、『僕の小規模な奇跡』は書き下ろしが追加された文庫がお求めやすい値段で出てますので、そちらもオススメです。
Posted at 2012.02.04 (09:34) by 天野寂 (URL) | [編集]
はじめまして!毎度作中の細かい仕掛けの解説にはひどく助けられてます!
未読だった未来を待った男を読んで凄く感動しました。イルマッティの黒くてグロめな話が好きな僕ですが、こういう青春な話もいいですね。左門の性別は完全に騙されてしまい、女性と解った時はかなり驚きました(笑
そこで、この話を最後まで読んでふと思ったのですが、明日も彼女は恋をするに出て来たみぃ婆って、もしかして左門だったりしないですかね?
多少無理があるかもしれませんが、まぁあまり読解力の無い自分の意見なので、一笑に付していただいても結構です(笑
でわ、唐突なコメント失礼しました。
Posted at 2012.02.12 (03:44) by 幸人 (URL) | [編集]
Re:幸人さん
はじめまして!
コメントありがとうございます。

いつも読んでくださっているようで嬉しいです。
『未来を待った男』は爽やかな青春小説ですよね。この読後感が堪らなく好きです。
左門の性別はミスリードさせる気がぷんぷんしたのですぐ気づいたのですが、騙されていたらかなり驚いたと思います。
性別誤認トリックに注意を向けさせておいて、さらっと老婆の伏線を貼ってくるあたりが非常に唸らされましたね。完敗です。

>そこで、この話を最後まで読んでふと思ったのですが、明日も彼女は恋をするに出て来たみぃ婆って、もしかして左門だったりしないですかね?

彼女も『みぃ婆』と呼ばれてもおかしくない名前ですし、可能性としては0ではないと思いますが、みぃ婆はやっぱりみぃちゃんだと思います。
みぃ婆はずっと昔から島に住んでいると描写されており、松平さんが「懐かしいなぁ」とか言ってるので、同一人物とは考えにくいです。
それに左門は80歳近くまでずっとタイムマシンを開発していたわけですから、島に来たとなるとそれ以後になり、20年前に島に来たとしても100歳近くになってしまうので、やはりそれも違うのではないでしょうか。
並行世界の可能性なども考え始めるとキリがないのでやめておきますが、個人的にはみぃ婆は左門ではないという結論です。
正直なところ、上に挙げたような理由もあるんですけど、左門にはこの恋の戦争に関わっていてほしくないという個人的な願望が一番大きかったりします(オイ
でも、『D.S.』で登場した見覚えのない老婆はもしかしたら……と想像することもできますね。
というわけで、非常に面白い仮説だと思います。
色々と考えてたら、また『昨日』と『明日』を読み返したくなってきましたです、はい。
Posted at 2012.02.14 (11:25) by 天野寂 (URL) | [編集]
薦められて読みました!
天野さん、こんばんは。以前、「恋する彼女」の感想を書き込んだ者です。その時、天野さんに「時間のおとしもの」をお薦めいただいたので、読んでみました。

表紙、私も「時かけ」を想像しました!躍動感があって、数字が踊っていて、笑顔でリードする彼女と、驚きながらも見惚れている「俺」が、物語のラストシーンとも重なって、すごく好きです。
中表紙のイラストの、大人になった彼女に、「時間を止めて」もらった瞬間、主人公はこんな感じになったんじゃないかなぁ。この「彼女」、左門さんの次に好きです。てか目が悪いのにカンニングとか、ずっと主人公に片想いしてて、出会いのきっかけを…つまり「時間のおとしもの」を、自分で作ったんですね。キュンキュンします。
時間を止めた方法、私も「いきなりキス」かととっさに想像しました。ただ、唇だとまずいから、ギリギリほっぺたとかかな?もしくは抱きつくだけでも、結構止まりそうな気はしますけどね(笑)

あと、両手の指輪ですが、右手の指輪には「恋人」という意味があるんです。ここから私の妄想めっちゃ入るんですけど…彼女もやっぱり、主人公のことが忘れられなかったんだと思うんですね。でもリアリストなのも女性ですから。で、彼女の旦那さんは、「初恋の彼が忘れられない、そんな君を好きになったんだ」みたいな人で、無理に主人公への思いを封印しなくてもいいって言ってくれて、だから彼女も好きになったのかも。で、「パワー全開」は、右手の指輪は「心の恋人」である主人公を忘れないためと、また会えますようにっていう願掛けかなぁ、なんて…だから、ほら会えた、みたいに自慢げに見せたとか。
ただ、全く違う想像もできて、最近ついに赤ちゃんができた彼女は、左手は旦那様、右手は未来の子どもの分、と、病弱だった自分も母になるんだからパワー全開でいかなきゃな!みたいな。まぁそれだととても切ないですが(泣)

電波ちゃんは、初稿を読みたかったですね。読んでみて、タイムパラドクス的に面白かったけど、確かに短編だし入間作品にしては毒が少ないなぁと感じたのは事実です。こんだけ絶望的な世界なら、もっとエグく書けるはずなのに、と(笑)
「ベストオーダー」は、設定を楽しむミステリ的な感じで読むように、泥棒計画が出てきた瞬間から、さっさと思考を切り替えました。あ、これは主人公たちに感情移入しちゃいけない系だ、と。自分が四人、しかも一人はループを経験している、ってかなり面白い設定だと思うんですけどね。もう少し長くして、違う感じにして欲しかったな、というのが正直なところ。

で、やっぱり「未来を待った男」が一番好きです。入間作品らしい、常軌を逸した一途さから生まれてくる愛しさが切ない。私も、左門は女性っぽいな、どう考えても瀬川は惚れてるもんな、ミスリードには騙されないぞ!と思いましたが、まさか「ナンパしていたバァさん」が左門だとは!もう、美弥子女史、大好きです!あー、でも、いるいる。こういう、無自覚美人。男泣かせの。でも、左門自身は「私の恋人は瀬川ではなく研究だ」といってますが、女子目線ではめちゃくちゃ瀬川に惚れてると思いますよ~。ラストで自分に嫉妬するとか以前に、バタフライ効果で研究に生涯を捧げたことになってますが、その動機が「親友との約束を果たすため、しかも親友を助けるため」ですもん。つまり、研究の発端が瀬川への想いである以上、研究=瀬川であり、「研究が恋人」は「瀬川(への想い)が恋人」だと思います。だって、不可能に思えることを、ひたすら瀬川のためだけを思って、タイムマシンが完成してからも6ヶ月もかけて、瀬川に会いに来たんですよ?ある意味、普通に付き合って結婚とかしてないのに、目の前にはいない人間にここまで一生を捧げられるあたり、究極の愛の形だと思いますし、「恋する彼女」の綾乃と通じるところがありますね。ひたすら相手の幸せだけを願う愛、というところが。
ところで実際に、若い頃美人だった人は、老いてもめちゃくちゃ美しいです。そういう意味で、老婆左門は近くで見たらめっちゃ綺麗で、しかも瀬川に忠告したときは、長い長い恋愛が成就したような、キラキラした気持ちだったから、そりゃあ美しかったと思います。瀬川が一目惚れした左門のデジャヴュを感じるのも当然だと思います。

ところで、すごく気になったのが、クリスマスをタイムリープした友人。この人がメインの作品が、別途あるってことですよね?読みたいです!
次は「僕の小規模な奇跡」を読んでから、花咲太郎シリーズを1から読んでみようと思いますが、「クロクロクロック」は、シリーズの一作品なんですか?単独の別シリーズかなぁと思って読もうとしたら、Amazonのレビューにそれっぽいことが書いてあったので。
Posted at 2014.04.19 (22:58) by あおい (URL) | [編集]
Re: 薦められて読みました!
あおいさん、おひさしぶりです。
またコメント頂けてとっても嬉しいです(しかもこんな長文!)

想像ですけど、『時かけ』のタイムリープシーンは少なからず意識したと思います。
ああ、たしかに! 表紙のイラスト、ラストシーンになってますね! 彼女が「俺」の手を取って……そうかぁ、なるほど。いやぁ、悔しいですけど、ありがとうございます。
あおいさんのおかげでこのイラストがますます好きになりました。
やっぱり不意打ちキッスを想像しますよね!
時間を止められた「俺」がようやく動けるようになって
「今のは浮気ッス?」
「いいえ、本気ッスです」
「……マジで?」
「ただし、中学生の私からの」
で、再びフリーズ。みたいな。
ないですかね?(真顔)

素敵な解釈だと思うんですけど、そこまで寛容な旦那さんはフィクションすぎる気もします。
昔好きだった相手のことを忘れることはないよ、程度だったら普通にいそうですが、その相手を想って指輪までつけてるとなると許容できるかなぁと。恋人ならまだしも、もう結婚しているわけですし。
ちなみに別作品ですが、奥さんが初恋の人の話をすると拗ねる旦那さんならいました。さらにちなみにこの奥さんはみーまーに登場した人物だったりします。さらにさらにちなみにその奥さんの初恋相手は枝瀬くんだったりします。ここまで言ったらもう分かっちゃうかもしれませんが。
話が逸れましたが、赤ちゃん説は普通にありそうだと思いました。母は強し、ですもんね。
かなり複雑な感情が渦巻くのは確実ですけど、それでも、彼女の子供が生まれてくる、それは喜ばしい未来に感じられるのではないでしょうか。

『携帯電波』の初稿はそりゃもうエグかったです。入間さん初の短編だったこともあって当時は「みーまーも大概だけど、これもキッツイな」と思ったものです。
短編集収録版は綺麗にエグ味を消して、読みやすく読みやすくリライトされてますね。読みやすいだけが作品の善し悪しではないことの証明になったとも言えます。
『ベストオーダー』は設定云々より、主人公が基本クズなのがアレでした。
入間ファンとしてはラストの探偵登場のインパクトに持って行かれがちなのも正直なところです。

正当派青春SF物語『未来を待った男』はこの短編集に限定せずとも人気の高い短編だと思います。もちろん、自分も大好きです。
性別誤認ミスリードを誘っておいて、実は最大の伏線は冒頭の老婆だったという一点だけで見ても本作の秀逸さには脱帽せざるを得ません。
というか、冒頭で老婆=左門に気づく人なんていません!(断言)
左門さんが瀬川に恋していたという解釈を別段否定するつもりはありませんが(と前置きすると否定するニュアンスになっていまいますが)、私は“今作の主役の左門”は瀬川のことを純粋に友人としてしか見ていなかったと思っています。
居酒屋で若い自分と瀬川を見守るシーンなどは決定的ではないでしょうか。
いわゆる本物の研究バカなんですよね、この左門さんは。
たしかにきっかけは瀬川でした。そして、タイムマシンの研究を続けたのも、瀬川のためでした。しかし、決して瀬川のためだけではなかったはずです。
彼女は“時間”に関する研究が好きです。大好きなんです。
毎日大好きな研究に没頭できるなんて、彼女にとってこれ以上ない幸福な日々だったことは疑いようがありません。
ですから、あおいさんの仰る『ひたすら相手の幸せだけを願う愛』という部分だけは違うのではないかなと。左門さんは幸せで満ち足りた人生を謳歌したんです。決して綾乃のように自分の幸福を犠牲にしたわけではありません。もし仮にタイムマシンを完成させることができなかったとしても、研究に捧げた人生は彼女にとってなにものにも代え難い価値のある一生であったはずです。
無意識に惹かれていた部分は少なからずあったでしょう。でもそれは、恋愛感情と呼ぶには友愛に近いものだったと思います。
男目線とか女目線とか関係なく、男女間の友情は成立しうるというのが自分の意見でして、純粋に瀬川という“友人”のため、研究に一生を捧げた、そんな左門さんだからこそ、私の目にはとても魅力的に映るんですよね。
いやまぁ、乙女な左門さんもそれはそれでどんとこいなのですが(笑)
たしかに綺麗な老婦人はいらっしゃいますけど、60歳ぐらいならまだしも80代の老婆になった姿を見て面影を感じる辺り、瀬川の惚れ具合の深さが窺えますよね。長年連れ添った相手とかじゃなくて一目惚れ相手なんですから尚更。

クリスマスをタイムリープした友人が主人公の短編『19歳だった』が『19 ―ナインティーン―』というアンソロジーに収録されています。
公式HP→http://www.mwbunko.com/product/2010/12_02.html
この作品は中々に実験作なのですが、ぜひ挑戦してみてください。
『クロクロクロック』は一応、単独のシリーズではあるのですが、入間作品でも類を見ないクロスオーバー尽くしになっていまして、別作品を読んでいないからといって楽しめないことはないんですが、読んでいた方が色々と嬉しいサプライズてんこ盛りファンサービス満載なお話になっているので、ある程度入間作品を読んでいた方が更に楽しめると思います。
そのレビューに関してはおそらく、『クロクロクロック』の主人公の一人が『花咲太郎』であり、続刊のない花咲シリーズの続編と取れなくもない内容である、というようなニュアンスで書かれたものではないかと思います。
ただ、みーまーと花咲シリーズを読んでさえいれば大体分かるはずなので、手を出すおつもりでしたら花咲シリーズの次でも全然問題ないと思います。

結構ガッツリあおいさんの感想に対する反対意見みたいなものを述べてしまいましたが、全部が全部そうじゃない! ってわけじゃなくて、素敵だと感じるところもたくさんあって、魅力的な感想だと思うからこそ、いやでも私はこう思います! って言いたくなっちゃうんですよね。
こうやって自分と違う感想や解釈を読むのはとても新鮮な体験ですし、なによりめちゃくちゃ楽しいんです!
なので、また感想聞かせて頂けると嬉しいです。
特に『僕の小規模な奇跡』は大好きな作品なのでとってもとっても楽しみにしてます!!(期待に満ち満ちた目で)
Posted at 2014.04.20 (08:09) by 天野寂 (URL) | [編集]
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