携帯電波 感想

今更感想シリーズ第七弾。
電撃文庫MAGAZINE Vol.1掲載『携帯電波』感想に御座います。
coming soon......とか言っておきながら、かなり間が開いちゃいましたがそこはご愛敬。

まず、「新学期シーズン」で一言。について一言。
いるまんwやさぐれっぷりがwまぁ男子校ならしょうがないよね、うん。

この『携帯電波』は【電撃コラボレーション The BOX~はじまりの箱の物語~】というコラボ企画で書かれたものだったりします。
五人の電撃作家さんが一つの『箱』をテーマに短編を書こう!的なノリのアレです。
そんなわけでちょっとした繋がりめいたものはあるんですけど、これだけ読んでも別に全然問題ないとは思います。というのもまるまるいるまんには他の短編は載らないでしょうから。と前書いてたんですけど、やっぱり載りませんでした。当然ですけど。自分としては勿体無い気もしますが……それは、雑誌派の特権になるのかなぁ。
そしてなんといってもこの話はみーまー以外では初の入間作品でもあるわけで、そういった意味でもとても思い出深い一作です。
初単品短編、初女の子一人称、初コラボ、とファーストバーゲンセール目白押しなこの話、実はいるまんが電撃に初投稿した作品を嫌がらせで改良したものだったりするそうです。
流石はいるまん、転んでもただでは起きない。リサイクル精神0なあのいるまんが、と思わなくもないですが、動機を知って納得納得。ほんと、良い性格してますね。

てなわけで、本編の感想へとぅーびーこんてぃにゅーど。




子供一人称の入間作品中で一番年相応な女の子。
彼女のことは“電波ちゃん”と呼んでいます。大きくなったら、“電波さん”。
ませていると言えばませているんですけど、他と比べると全然可愛く思えちゃうレベル。
ていうか超可愛いです、きゅーと。
種島くん直伝・ふれきしぶるもふはふはでした。
お母さん大好きーなところがもうあれですね、可愛いです。

内容は携帯電話で繋がった別の自分と入れ替わってしまう、いわゆるパラレルワールドもの。
ラストの展開はタイムトラベルものではないにも関わらず、タイムパラドックスめいていて、すごく上手いなと思いました。
自分の娘が自分で、自分の母親も自分で、自分はもちろん自分で。
えと、つまり、どゆこと?
とこういう頭の中ぐーるぐるなすっきりしないオチは大好きです。
なんか色々難しく考えたりするのって楽しいです。

世界がひっくり返ったような、足元がふっと消えて胃がきゅっとなる気持ち悪い浮遊感がなんとも言えない読後感を残してくれます。
最後の女の子は一体誰なのか。
微笑んでいるところがなんともホラーチックで怖いです。
わたしはどこからはじまってる?っていう問はでも、誰でも一度は抱くものではないでしょうか。
卵が先か、鶏が先か。
コラボのテーマとしてもこれ以上ないってほど合っていて、素晴らしい短編だな、と素直にそう思います。

後半の思考垂れ流し改行無しのターンはみーまー9のクループの原型、元祖とも言える濃ゆさです。
同じ行を何回も読んじゃって、それでもなかなか内容が頭に入ってこない、というか始めから理解させる気がないんじゃないかと疑いたくなる筆力の凄まじさに、ただただ圧倒されました。
こんな文章を生み出すいるまんの脳内を一度覗いてみたいです、割と本気で。
で、そんな電波ゆんゆんな思考垂れ流し中に携帯の電源復☆活!した後のハイテンションとのギャップw
そりゃー安生さんも祝ってくれるっちゅーもんですよ。

そして、自分の大好きな入間節炸裂。

そこがどれだけ不幸であったとしても。
ありがとう。
そこが何処までも幸福であったとしても。
……ごめんなさい。


……なんていうでしょうね。
「ああ、この人優しいなぁ」って暖かい気持ちになるんですよね。
例えるなら、炬燵。あのおこたの温もり。
どうしようもなく文章から沁みだすその優しさにゆったりじわじわと安心させられます。
どれだけみじめだろうと、どれだけ図々しかろうと、自分の幸せは自分で掴む。
幸福を得るのに綺麗事だけでは済まないから。
自分が奪ってしまった幸福も不幸も全てを背負って。
悔いながら生きていく。
それでも、前に進んでいく。
熱くはないんだけども、決して冷たいわけでもなくて。
他にも好きなところは数えきれないほどありますが、いるまんのそういう考え方が自分が入間作品を好きな理由の最たるものです。
自分のはじまりなんてもう覚えてませんし、思い出そうとも思い出せるとも思いませんが、今の自分がはじまったのは入間さんと出会ったときなのはもう明々白々で、そんな素敵なはじまりの延長線上で今日も生きながらえていることに今更ながらに感謝しつつ、ささやかだけど満ち足りた、そんな幸せを噛み締める今日この頃でございます。

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Comments

No title
なんとも興味深い作品です。でもなんてこった……。
読む術がないじゃないか!
『まるごと一冊』にも載らなかったから、現時点では読むことは不可能ですね。悲しすぎます。
こういう状況だと、天野寂さんの感想が逆に恨めしくなります。
何でこんなに、私の心を直に突くような文章を書くんですか!
読めないのに、読めないのに。
………………(←心を落ち着かせている)
すいません。身も蓋もないことを言ってしまいました。
つまり何が言いたいのかというと、天野寂さんの感想は素晴らしいということです。
でもいいんです! 信じてますから。
いつかきっと、『入間人間全集』が出ることを。

それにしても、入間節が輝いてますね。
記事の中で挙げている4文だけで鳥肌が立ちました。
熱いわけではないけど、冷めているわけでもない。
この言葉、すごく分かります。
人ってのは、何かを認めたり受け入れたり諦めたりすることで、人と人、気持ちと行動、過去と未来を繋いだり切ったりして生きていくんだなってことを教えられます。
人生は素晴らしいことばかりではないけど、捨てたもんでもないんだということを。
それを肯定することができたら、私たちは前に進むことができるんだということを。
私の個人的な解釈ではありますが。

素晴らしい感想御馳走様でした。
Posted at 2010.06.19 (01:06) by つかボン (URL) | [編集]
No title
携帯電波ってコラボ作品だったのですね。
知りませんでした。
他の作品が読めなかったのは残念ですけど。
15周年記念でコラボ作品が文庫化した事があるので、もしかしたらって期待しています。
20周年記念とかで文庫化してくれないですかね。

携帯電波の最後の展開好きですね。
お母さんが自分で子供も自分で・・・あれ、えーと。
みたいな感じでしばらく頭の中がぐるぐるしてました。

入間さんの作品は色んな解釈が出来るから面白いですよね。
これはきっとこういう事なのかも、いやもしかしたこうなのかもって色々考えるの好きです。

暗くて救いのないような話でも、どこか温かみのある文章。
そういう所が入間さんの人気たる所以なのではないかと。
あの抜粋されている所は堪らないですよねー。
Posted at 2010.06.19 (20:23) by 半熟タマゴ (URL) | [編集]
Re:つかボンさん
?何か勘違いされてるだけだと思うんですけど、『まるごと』に『携帯電波』ばっちり載ってますよ。
というわけですので、さぁ早速読みましょう今すぐに!
でも、『入間人間全集』は出て欲しいですね。
自分も信じることにします。

入間節全開です。
引用したところ以外ももちろん素敵フレーズ満載でしたので、どこを引用するか大いに悩みました。
>熱いわけではないけど、冷めているわけでもない。
>この言葉、すごく分かります。
つかボンさん、イケるクチですね。
おお、なんだか壮大ですな。
まぁ、自分は人生なんて最期に笑って死ねたらこの上なく幸せなんじゃないかなーとかなんとか、つまりあんまり深く考えてないです。

こちらこそ、素晴らしいコメント、ごちそうさまでした。
Posted at 2010.06.20 (00:00) by 天野寂 (URL) | [編集]
Re:半熟タマゴさん
そうなんです、ちょっとした豆知識ですね。
まぁ、リンクしていると言っても全ての話に同じ箱が出てくるっていうぐらいなので、全然単品でも問題ないです。
15周年記念のは買いました、積んでますけど。
20周年があれば是非、入間さんにも参加してほしいですね。
っていうか進んで参加しそうな気がします。

こういうラスト堪んないですよね。
なんとも言えない気持ち悪さが逆に気持ちいいというか。
ぐるぐる考えるの超楽しいです。

>入間さんの作品は色んな解釈が出来るから面白いですよね。
すごく分かります。
入間作品によくある、あえてはっきりさせないところ大好きです。
色々妄想が止まりませんし、自分の中ではどれも正解にしてしまいますし。

少なくとも自分はそこが好きで、入間作品を読んでますね。
この不思議な温度感に癒されるんですよ、ほんと。
この引用箇所には入間分が凝縮されてますよねー。
Posted at 2010.06.20 (00:19) by 天野寂 (URL) | [編集]
No title
『携帯電波』の件ですが、何故か『携帯電波』だけ読まずに『まるごと』を読み切ったと勘違いしていたようです。お恥ずかしい。
そんな訳で早速読みました!
身の毛もよだつというか何というか。
とにかく今は方の震えが止まりません。意味もなく部屋の中をキョロキョロしてしまいます。
自分は一体誰なのか。自分はいつから始まっているのか。
自分の存在が曖昧になる気味の悪さに心が波打って落ち着きません。
でも何故かその気持ち悪さが心地良い。
そしてやはり、記事に挙げていた四文が秀逸ですね。

これにて、ようやく『まるごと』読了です。
入間先生の世界を充分に堪能させていただきました。
私は暇なときは、脳内をぐちゃぐちゃにこねくり回して、無駄にいろいろなことを考えているわけですが、最終的に行き着く場所は天野寂さんと同じように、人生を笑って終えれたらいいな、ということです。
というより、私の場合は、自分が死んだときに誰か一人でも泣いてくれる人がいれば、自分が生きた意味はあったな、ということです。
だから今は、自分が死んだときに誰かを泣かせるような人生を歩んでいる……つもりです。
Posted at 2010.06.20 (17:20) by つかボン (URL) | [編集]
Re:つかボンさん
いやいや、危なかったですね。
順番が何故か最後になってますから、それで見落とされたのかもしれませんね。
なんていうか、現実にちょっとありえそうなところがまた怖いです。
電話を取る時にちょっと躊躇ってしまうような……まぁ、滅多にかかって来ないですけどね!
そうですよね、落ち着かないし気持ちの悪いったらない。
だが、そこがいい!みたいな。

本当にこの『まるごと』の企画は素晴らしかったと思います。
是非、またやって欲しいものです。
自分なんか暇じゃないときでも、色々ごちゃごちゃ考えてますよ。
誰も泣いてくれなかったらそれはそれで寂しい気もしますけど、自分があんまり湿っぽいのは好きじゃないので、ちょっと涙浮かべながら「やっとくたばったかあの野郎」みたいに笑ってくれるひとがいればいいかなーと、今思いつきました。
あ、あと言い忘れてましたが、それとやっぱり最期は畳の上で死ねたら幸せですね。
Posted at 2010.06.20 (21:31) by 天野寂 (URL) | [編集]
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