デッドエンド 死に戻りの剣客 感想

1年振りのメディアワークス文庫『デッドエンド 死に戻りの剣客』の感想です。
余談ですが、MW文庫18冊目にして何気に初のサブタイトル付き作品だったりします。

deadend0
死ぬ度に蘇る。そしてまた斬り結ぶ。
“死に戻り”に翻弄される男の一生


生涯最後の決闘――。相手は幼き頃からの同門。敵意を向かい合わせて腕を磨いた、我が半生の片割れ。かつて一度として剣を届かせることのできなかった仇敵。
どちらが真剣での決着を言い出したのか。とにかく、確かに私は斬られたのだった。
だが気付けば、私は果たし合いの直前に戻っていた。
斬り殺される度に、時間は巻き戻される。死ぬ度に蘇る。そしてまた斬り結ぶ。私の振るう剣が、あの男に届くまで。
不可解な現象に巻き込まれた“死に戻り”の剣士が辿る、数奇な一生とは――。
入間人間がおくる、異端の剣豪小説。

それでは
いざ、尋常に
何度でも言いますが、hakusさんのイラストめっちゃくちゃ格好いい!!
本当格好いい!! 格好いい以外の形容が出てこないもとい不要です!!
ただ、一つだけ残念なのが、電撃文庫MAGAZINE掲載時の扉絵が載っていないことです。
イラストはもちろん装丁自体は文句なしに素晴らしいです。それは間違いありません。
そして、イラストをたくさん載せるような内容でないことも確かで、表紙絵一枚に絞ったのは英断だと思います。
でもやっぱりそれを踏まえても、あの名画を埋もれさすのは惜しいです。
せっかく公式サイトにお誂向きなギャラリーがあるんですから、載せましょう(提案)

サムライ・デッドエンド(改題後:火花)

全世界の入間さんを見たことがある人達の代弁『いるまんじゃん!!』
マジいるまんすぎてイラスト見た瞬間に「えっ!? 今度は自伝? でもそれってどんなバカ全裸……」と早とちるのも無理からぬ話です。
それ抜きにしても、めちゃくちゃ格好いい一枚です。ただただ格好いいです。
身体を纏う炎はさながら不死鳥。
これほどまでに内容にマッチしたイラストは左さん以来ではないでしょうか。
そんな素晴らしいイラストを手掛けられたのは第18回電撃イラスト大賞にて大賞を受賞されたhakusさん。
hakusさんはpixiv見る度いいなぁと思ってはいましたが、今回一発でファンになりました。ならざるを得ませんよね、ええ。

秘剣倒れ独楽(改題後:独楽)

うおぉ……と言葉を失う格好良さ。
イラストの完成度の高さも然ることながら、本文再現度も半端ないです。
浪人っぽさも素晴らしいですが、なんと言っても眼ですよ眼。
読む前こそ両眼の不均一さに「ん?」と首を傾げましたが、本文を読み終えるとなるほどなるほど。
ただでさえ震えるほど格好いいイラストなのに、ここまできちんと本文が反映されていると無条件で拝んでしまうじゃないですか。
小説にちゃんと目を通してから描いてくださったんでしょう。
hakusさんと今後もご縁がありますように。

というわけで以上、雑誌掲載時のイラストに対する感想でした。

花火

雑誌掲載時の感想(途中書きで放置熟成させておいたもの)

入間人間、初の剣豪小説。
剣に生き、剣に死んだ二人の侍の物語。
花火のような一瞬の閃きに今年(2015年)一番満たされました。
次またこんな花火が見られるのはいつになるのだろうか……。
端的に言って素晴らしい短編でした。
自分の中で2015年の全入間作品(短編、web小説含む)中ベストを挙げるならこれってくらい良かったです。

3年振りぐらいの短編でしたが、、やっぱりいるまんの真骨頂はこれだよなぁって改めて実感しました。
消化不良で待たされるのは焦れったいというかもう正直うんざりなので、シリーズはいいから1冊で終わるものを書いてほしいなぁと思います。すごく思います。
ただ、そうもいかないってのもわかってはいるんですけど。

全然内容に触れていませんが、いつも私が書いている感想が書きにくい作品なんですよね。
自分は勝手にこういう作品を『雰囲気小説』って呼んでいるんですけど、この『雰囲気小説』はとにかく感想を書くのが難しいんです。
だって「とにかく雰囲気が最高でした!」って書くしかないんですもん。
でも自分、雰囲気小説大っっっっっっ好きなんですよ。
うまく説明出来ませんが、森林浴に行って胸一杯に新鮮な空気を吸い込んだ時のあの感じって言ったら伝わりますかね?
あの感じが味わえるんですよ、雰囲気小説って。
まぁ、森林浴なんて行ったことないんですけど。

個人的に雰囲気小説の極みと言えば森博嗣作品を置いて他にありません。
特にノンミステリィ作品はほぼ極上の雰囲気小説だと言っても良いです。
最近はミステリィであっても雰囲気重視な作品が多くて嬉しい限りです。
少し話が逸れましたが、本作が気に入った方にヴォイド・シェイパシリーズという剣豪小説をオススメしたいという話です。
内容はもちろん、装丁も溜息が出るほどの美しさという本当に素晴らしいシリーズで、雰囲気小説としても本作より数段上を行っています。
ただ、同じ剣豪小説と言っても、こちらは異能というSF要素が入っていたり、こちらは短編であちらは長編だったりするので、単純に比較は出来ないんですけど。
映画化もされて有名なスカイ・クロラシリーズも素晴らしい雰囲気小説ですが、個人的には断然ヴォイド・シェイパシリーズの方が大好きです。

というわけで、感想が書きにくいんですよ。
改めて読み返してみても、雰囲気最高だなぁと。
以上ですね、はい。

当時は一話完結だと信じて疑わなかったので、ラストの余韻に酔いしれてたんですけどねぇ。
しのぎを削ってきた2人の男が命を賭した真剣勝負の末、花火に彩られた夜空の下、肩を並べてその生涯を閉じる、こんな美しい幕引きがありますか!
実際にはこの物語は続くわけですが、ここで終わる短編としての完成度は入間作品の中でもトップクラスだと思います。

独楽

雑誌掲載時の感想(例によって熟成させておいたもの)

まさか続くとは……なんであのまま綺麗に死なせてやらなかったんですか!!
『サムライ・デッドエンド』の評価が落ちることはありませんけど、正直に申し上げて蛇足にしか思えません。
でも、このラストを見せられるとこれはこれでありかなってちょっとだけですけど思えました。

柳原との真剣勝負の後、生き残ってもとい死に損なった私。
あれから2年。
利き腕を失ったまま、人斬りとして悪名を馳せるまでになるとは驚きです。
佐村一光(さむらいっこうって洒落ネーム?)に久しぶりに斬り殺されたという描写から、柳原以降はそれほど死に戻り頼りというわけではなく、私の地力の高さが窺えます。
実際、右腕以外に深手はないようですし。自分で右目失ってますけど。なにしてんねん。
こういう意味わからん行動、本当いるまんを感じます。
なるべく無傷で勝たないと次のステージがどんどん難易度アップしていくので、下手に勝つのが一番怖いですね、このループ地獄。

秘剣倒れ独楽。
なんていうか、隻腕でのトリッキィな殺陣にめちゃくちゃマイマイを思い出しました。
イメージ映像としてはフィギュアスケートのスピンがぴったりだと思いました。
あんな感じでクルクル回りながら、蹴りを放ち、剣閃を避け、刀を振り上げる。
格好いいけどなんか笑えますね!

時代物のお約束、美人の娘さんきた!
確実に黒髪ロングなのでhakusさんのイラスト超楽しみです!

この短編(章)のテーマは『贅とは何か』でしょうか。
死に損なった彼にとってそれは死に様を己で決めること。
真剣勝負の中で斬って、斬られて死んでいきたい。
死に戻りでそれが叶わぬならば、その異能を持ってしても超えられぬ剣腕を求むるのみ。

ところで、野暮な疑問なんですけど、自殺したり餓死した場合はどうなるんでしょうね?

逆流

シグルイのせいでどうしても『さかながれ』と読んでしまいます。

都で五指に入るって佐村一光そんなに強い侍だったんですね……それを一度の死に戻りで討ち取ったというのはめちゃくちゃすごいことなのでは。

薄々予想はしていましたが、佐村稲は卑怯。
佐村一光のときは別になんともありませんでしたが、『さむらいね』は笑います。

期待通りの美貌の持ち主であった稲殿ですが、メシマズでしたか……お茶はともかく、どうやったら劇薬のような蕎麦が出来上がるんです?
そして、それ以上に、自分の料理が不味いことをわかっていて勧めてくるのが怖いですね。
しかも、それ食べるとこ見てニコニコとかドSかよ。

佐村一光に名乗るところで名前を出さなかったので、また名無しの主人公かと思いましたが、さらっと名前出しましたね。
米原姓で異能持ちということはシロ(アイで空が落ちてくる)の子孫で、マイマイこと米原麻衣(トカゲの王)の先祖なんですかね?
隻腕になるのも、奇怪な戦闘術も血か……まぁ、米原は子供残しそうにありませんが。

ここに来てなんでいきなり別人視点なのかと疑問でしたが、既に死に戻っていたとは。
章題で気づけよって話ですが、この作品でそういう仕掛けはないかなーと思っていたというか求めていなかったので、無警戒でした。
ここは素直に「お見事」と言っておきます。

勝てぬ。
柳原以来、二度目の完敗。
秘剣倒れ独楽を初めて破ったのは、作中最強となった佐村稲。
父を遥かに凌ぐ剣才に、親の仇という確固たる目的。
どうやら米原の見立ては甘かったようで、とんでもない怪物を生み出してしまいました。
想像でしかありませんが、死に戻り前、一度目の稲殿より、死に戻り後、米原との短いながらも忘れがたい邂逅を経ての二度目の稲殿の方がより強くなっている気がします。

「理想を他人の手で叶えようとしている者に、人を斬る化生の欲が分かる道理もない」

7年前、彼女に放ったこのセリフは少なからず響いたことでしょう。
7年後、すっかりこちら側の人間になってましたしね、稲殿。正直なり過ぎなくらい。

そして、残った左腕を犠牲に執念の反撃。
結果は相討ち。
何度繰り返してもおそらくこれ以上の結果は望めなかったでしょう。
左腕で到達できる頂に達し、満足する米原。
やっと死んでいけると思いきや……そうは問屋がおろさない。

もしかすると本作って打ち切られていった作品のセルフオマージュなんでしょうか?
・死に戻りの設定→強くないままニューゲーム
・隻腕での奇抜な戦い方→トカゲの王のナメクジ
・両腕を失い、口で刀を咥えての刺突→美少女とは、斬る事と見つけたり
いやいや、まさかね。
ままニューはともかく、トゲ王と美斬剣は打ち切られてねーし。違うよね?

今回、米原の一人称表記が一番気になりました。
基本的には『私』ですが(幼少期に一度『わたし』もありました)、『逆流』と『頂』で数回『俺』もしくは『おれ』になっている箇所があったんですよね。
一人称ソムリエとも名高いいるまん(当社比)が一度ならまだしも何度も人称ミスをするとは思えません。
考えられるのは、右目に宿る柳原の影響を示唆する描写なんですけど、柳原の一人称は『おれ』または『私』のみ。
となると、柳原と米原が混じったのが『俺』なんでしょうか?
この解釈を補強する材料として、右目の影響か、言動や行動が粗野になっているという描写もありました。
ですが、使われている場面を見てもいまいちピンと来ないってのが正直なところです。
ただ、『火花』以降(右目が元に戻ってから)は『私』オンリーなので一応筋は通ります。
もしくは、冒頭の『お前は、誰だ?』という自問と、数えきれない死に戻りを重ねる中で曖昧になっていく自己を表現するためにあえてブレさせたのかもしれません。
そして最後に、自問の答えでもある確固たる『私』を手に入れる。
個人的にはこちらの方が綺麗かなと。
好みで言うと、こちらの解釈を推したいところです。

火花

これで芥川賞狙いましょう!
佐村稲と相討ち、目覚めると更に昔にまで戻ってしまった米原。
この作品で異能についてあーだこーだと考えるのはあんまり気が乗らないんですけど、文字数稼ぎにちょっと考えてみると、死に戻りによって巻戻る地点というのは、そこから再開すればその相手を倒せるという地点になっているんじゃないかなと。
ほとんどの場合は直前からの再開でしたが、佐村稲という怪物を倒すには7年という長い月日が必要で(もしかすると稲殿が強くなる前に倒すチャンスを与えてくれていた可能性が考えられますが、それは真剣勝負によって死にたいという米原の望みに反するので無し)、しかし、最良の結果でも相討ち止まりでした。
左腕一本となった米原にとって、そこが頂という名の限界だったのでしょう。
では、どうすれば佐村稲に勝てるのか?
五体満足で繰り出す倒れ独楽ならば、あるいは。
というわけで、遥か昔の少年時代まで戻されたんじゃないかなと、そう解釈しました。

このまま剣の道を選ばず、別の道を歩めば、この地獄から抜け出せるかもしれない。
どちらを選ぶのが正しいのかは分かっていて。
しかし、その道に幸福はあっても、求めるものは剣の道にしかなくて。
最早、迷うことは何もない。

「誰にも負けることのない侍と、なってみせます」

いつか憧れた『さむらい』から、実現を目指す『侍』へ。

先程の一人称の話を踏まえて、ラスト直前の一文を解釈してみます。

その日が来たときこそ、私たちは。

素直に読むと『その日が来たときこそ、私たち(米原と柳原)は(再び真剣勝負をするだろう)。』と解釈出来ますが、『その日が来たときこそ、私たち(わたしと私とおれと俺、つまり、隻眼隻腕の剣士として生きてきた自分と五体満足に戻ったものの鍛錬する前の未熟な身体に戻った自分)は(一つになる)。』と解釈することもできます。
これはどちらかが正解ではなく、どちらの解釈も正解なのではないか、という気がします。

再び終わりが始まるところでこの物語は幕を閉じます。
米原の地獄はこれからもずっと、それこそ永遠に続いていくのかもしれないというのに、なんたる清々しさか。
確固たる己を手に入れ、一切の迷いなき剣を振るう彼はきっとこれから、もっともっと強くなるでしょう。
そしていつか、父への宣言通り、右に出る者なき侍へとなる日が来るのでしょう。
彼の『行き止まり』は遠く遠く。
彼の『デッドエンド』はまだまだ始まったばかり。


『サムライ・デッドエンド』以降は蛇足という考えは変わりませんが、これはこれで素晴らしい、見事な小説でした。
何よりも1冊で綺麗に終わっているっていうのが素晴らしいです。
1冊完結は文庫化のぼっちーズを除くと虹色エイリアン以来なので、約1年半振りとなります。
せめて半年に1冊……1年に1冊でいいから出してほしいものです。

あとがき

それは嫌だ(素)

正直なところ、『サムライ・デッドエンド』の時から、剣豪小説というか時代物を書くならSF要素なしがよかったなと思っていたのですが、そちらがメインだったのなら仕方ありませんね。
入間の間のコメントでも発想の元が格闘ゲームと仰ってましたし、剣豪小説にSF要素をプラスしたのではなく、死に戻りというSF設定がまず先にあって、その舞台を時代物にしたと。
というわけで、今度はぜひ、SF要素なしの時代物お願いします入間さん!

私も入間さんには息災に長生きしてほしいです。
もちろん、無理をしない範囲で執筆活動の方もよろしくお願いします。
その代わりと言ってはなんですが、私も程々に長生きしようと思います(全然代わりになってない)

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