脇を締めてコンパクトに振り抜く 感想

電撃文庫MAGAZINE Vol.50掲載・入間人間作家生活9周年記念短編『脇を締めてコンパクトに振り抜く』の感想です。

金属バット持参でバッティングセンターに通い詰める女子高生。
彼女が遭遇した一夜の出来事。


クラスメイトの行方不明が相次ぐ田舎町。
消えたのは私の前に座っていた三人。
未だ犯人は捕まらず。
次に控える席には、私。
狙うは、フルスイングで犯人を返り討ち。

このあらすじだけで鋭いイルマニアはお気づきかもしれませんが、本作は某作のスピンオフ的な作品です。
まだお読みでない方は感想を読む前に電マガを買いに行くことを強くオススメします。
特に初期からのファンにとっては必読とも言える内容です。
一応、この短編だけで完結しており、もしかすると書籍化されない可能性もあり得ますので、お見逃しなく。

それでは続きからネタバレ全開でお送りします。
約2年越しの公言成就ですねいるまんっ!

Q.入間さーん、みーくんとまーちゃんの娘さんが主人公のお話が読んでみたいです。お願いします。

A.これは一冊ぐらい書いてみようかと色々考えているので、あまり期待はせずにお待ちください。
 今のところは十七歳の女子高生が金属バットを振り回す程度の予定が立っています。

(第8回・入間の一問一答より)

ここでは17歳と言っていますが、高校入学間もない彼女が17歳だとするとどっかで一年留年していることに……なにもそんなところまで両親を見習わくても。
冗談はさておき、かなりふわっとした構想だったと推察されるので、当時思い描いていたものとは別物の可能性も大いに考えられます。
2年近くも経ってますし、『僕の小規模な自殺』という前例もあります。

そして、一番気になるのは『1冊ぐらい書いてみようか』の部分です。
上にも書いた通り、少なくとも今回は単品で綺麗に終わっている短編なので、予定を変更して短編のみとなったのか、これを第1話として何回か連載したのち書籍化されるのか。
前者だったら、少し残念ですが、約束は果たしてもらいましたし、十分満足に足る内容だったので不満はありません。
その場合、この短編はここだけのものとなる可能性が非常に高く、買っておかないと一生後悔すること請け合いです。
後者だったら、それが10周年記念のみーまー新作になるのかもしれません。
それでも全然嬉しいんですけど、できれば記念作品は全文書き下ろしの方が超嬉しいなーってわがままを言ってみたり。

内容に入る前に、娘さんの名前にどうしても突っ込ませてください!
枝瀬まい、まいっているまん、まいっているまん!! 参っているまん!!!

Q.××くんとマユちゃんの娘の名前はあゆちゃんでいいですよね?

あと、入間先生の愛称はいるまんでいいですよね?決定ですよね?

A.一応決めていたのですが忘れてしまったので、それでいいです。あと愛称もなんでもいいです。関係ないけど外国名だとhitomairumaになっていて、え、これ名字と名前で分かれていたの? と思ったりします。

(第6回・入間の一問一答より)

あゆちゃんじゃねーのかよぉ!!
このやり取りを忘れてしまったのか、一応決めていた名前を思い出したのか、どっちなんですかいるまん!!
いや、“まい”も“あゆ”もあいマユのミックスネームなのでどっちも素敵でOKですよ?
でも、誕生日を間違えるとかならまだしも、名前を忘れて変更するってのは許容できんぜよ!!
とってももしもにもしかして姉妹のいる世界なら?
実はみーまーの子供は双子の姉妹で(双子である必要はありませんがなんとなく)、にゅーまーはあゆちゃん、今回はまいちゃんだったとか。
書いていてそれはねーよってセルフツッコみたくなりますが、そうなるといよいよパラレルワールドになっちゃいますな。
困ったときのパラレルマジック! はやめてほしいですけど。

それでは前置きが長くなりましたが(長すぎ!)、本編の感想に入りたいと思います。

まいちゃんに普通に友達がいることに泣きそうになりました。
失礼ながら絶対ぼっちだと思っていたので、学校帰りに友達とつるんでいる姿なんか想像もしていなかったと言いますか、完全に親目線なんですけどほっとしちゃいました。
よかったね、まいちゃん。
まいちゃんの友人こと小路坂嬢から漂う女版金子臭、実に良かとです。
あっきゅんと金子の関係とまいちゃんと小路坂の関係はかなり違いますが、彼女のポジションを的確に表すのに“女版金子”以上の表現は思いつきません。
小路坂さん、これからもまいちゃんと仲良くしてやってね。

まいちゃんの一人称なので当たり前と言えば当たり前ですが、彼女の容姿に関する描写はほぼありません。
でも、あのやたら女受けの良い父親に瓜二つということはつまり、女の子の場合、同性キラーになり得るということで、ここの小路坂の反応はそんなまいちゃんの笑顔にどきっとしてしまったのではないかと。
ところで最近、やたら女の子同士の話が多い気がするのですが、気のせいでしょうか?
この作品含め今日(6/10)公開された3作品全部女の子と女の子の話なんですけど、気のせいでしょうか?
いるまん、もしかして、目覚めちゃった?
閑話休題。
300円で飲み食いの堪能できるところと言えば、駄菓子屋!
たません食おうたません!

ちょっと前にTwitterで『#SEXを恥ずかしくない表現に変える』というハッシュタグが流行っていましたが、もしまいちゃんがTwitterやってたら優勝してましたね。

両親がアンヤーコーラーエッサッサした結果、私はここにいるのだ。

使用時はぜひとも小節をきかせたいところです。

嘘が下手なのも父親譲りっぽくて微笑ましい限り。
本当はシュークリーム好きでしょ?
甘いもの好きは両親譲りだもんね。

もしかして、小路坂以外にもいっぱい友達いるのかな? と思ったりもしましたが、やっぱり貴重な貴重な友人でしたか。
大事にしてほしいけど、まいちゃんの性格を鑑みるとそれはかなり難しそうです。

自転車乗れない系女子が多いことに定評がある入間作品ですか、そうか、まーちゃんは結局自転車乗れるようにはならなかったのか……。

にたぁー、と笑うまいちゃんがヤバイ。本来の意味でヤバイ。
おじいちゃんの血がどくどくと流れているのを感じます。

犬に餌をやりながら、帰ってきた姪に愛想0の「おかえり」を言う愛音叔母さんに強烈な既視感を覚えました。
一人で「う~ん、どこで見たんだっけな~」と唸ること数分、「あぁっ!」と気づいた瞬間、不覚にも涙腺がショートしました。
本当にそっくりなんですよ、母親の海豚さんに。
海豚さんは飼いたくても(家長の許しが下りず)飼えなくてよその家の犬に餌やってたのに、その娘は4匹も侍らせてるとか羨ましすぎでしょ。
愛玩用ではなく食用とは言いますが、老衰するまで世話して情が移らないはずがない(というか彼女も母親と一緒で動物好きなのだと思います)ので、亡骸を食べるというのは愛音なりの愛情表現ないしは供養の意味があるんじゃないかなと。
もちろん、実益も兼ねているとは思いますけど。
というわけで、海豚さんそっくりな女性になったにもうとが見られたのは嬉しかったのですが、『安達としまむら6』でゴンの話をやった直後に犬を食べる話は正直、こう、クるものがありました。
実際のところ、老衰した動物の肉ってどのくらい食べられるものなんでしょうか?(味的な意味で)

ナイフはともかく、なんでバットの使い方にも精通してんの?
よしんば精通していたとしても、用途が違うでしょ用途が! とツッコみかけましたが、よく考えたらまいちゃんも別にホームランが打ちたいわけじゃなく、獲物を仕留めるためのスイングを習得したいのかと納得しました(して良いのか?

「私働かなくても生きていける人間だから」

か、かっこいい……!
人生で一度は使ってみたいセリフランキングトップ10に間違いなく入りますね!

胸の薄さが父親から遺伝するわきゃあないので、そこに関してはゆなりん譲りかな。

 自分のために、誰かを必要とできない人間だった。

似てないどころか、真逆と言ってもいいレベルですね。
まいちゃんはお父さんと違って一人でも生きていける人間なんでしょうけど、個人的には白馬の王子様が現れてメロメロになっている彼女が見てみたいですね。
10周年記念、楽しみにしておりますよ?

いつもの入間作品と言えばそうなんですけど、犯人との死闘は過去の事件を意識して書かれているような気がしました。
上品さを宿す中年の犯人は南さんだし、前半の一方的な展開はあっきゅんと瓜二つだし、手と足の違いはあれど親指を噛み抉るのはVS度会さんだし、そして最後のフルスイング。
誘拐犯に頭をホームランされたあっきゅんと誘拐犯の頭をホームランしたまいちゃん。
見事な対比なのですが、快っ感……! なまいちゃんがアカン。
どうやったらこんな子に育つのか……親の顔が見てみたいものです(挿絵的な意味で

奈月さんに心配かけたらダメだよまいちゃん。
引き取りに来た保護者=マユですかね。
流石にあっきゅんがなにも言わないってのは考えにくいです。ってかあり得ません。そんなんあっきゅんじゃない。
学校から呼び出されたときもマユが迎えに行っていましたし、呼びだされれば迎えに行く程度には母親しているんだなと安心します。

自分本位ここに極まれり。
色々ごちゃごちゃ言ってますが、要するに自己満足のために2人の人間の人生を狂わせた挙句、想定していたのと違う! と自分にキレる始末なわけです。
はっきり言いましょう。
まいちゃんはクズです。ゲスを極めし乙女です。
他人に関心を持てないのは別にいいです。
でも、だからといって、今回したことが許されるわけではありません。
犯罪に巻き込まれた人間の人生がどんな風になってしまうのかを身近で目の当たりにし、人一倍理解しているであろう彼女が、間接的であろうとそれに加担したことが本当に悲しいです。
誘拐ではなく殺人だと思っていたので、同級生は殺されることを想定していたのでしょうが、そうだろうとクズはクズです。
みーまーの娘だからって理由でまだギリギリマイナスには振りきっていませんが、もし仮に彼女がただの新キャラだったりしたら好感度は過去最低レベルだと思います。具体的には『ベストオーダー』の<3号>に迫る勢い。

彼女はそれを『呪い』だと言う。
だけど、それは違うよ、と。
実際、呪いはあると思う。
これまで、呪いのせいで不幸な目に遭っただろう。
これからも嫌なことがあるだろう。
でも、それと今回彼女がやったことは関係ない。
全くといって、ない。

人の頭をバットでフルスイングしてみたい

気が弱いから(どの口が言う?)、とても無理

悪人なら出来そうかも

なにこのクレイジー三段論法(誤法)
いっぺん、親の顔が見てみた以下略。
真面目な話、あっきゅんにはガツンと説教してあげてほしいんですけど、父親としてはダメそうだからなぁ……

やっぱ甘いもの好きなんじゃん。
アイスクリームでいい感じに締めようとしているけど、正直釈然としません。
被害者2人に対する謝罪の気持ちが1ミリ足りともないのがもやっとするというか、もし自分より先に小路坂が被害に遭っていたとしても別になんとも思わないんだろうなっていうのが想像できてしまって、救いがないなーって。

 なぜこの世に生まれてきたかはまだ分からない。
 一つ分かるのは、人を傷つけて生きていくしかない、ありふれた人間であるというだけだ。

絶賛思春期真っ盛りなのは結構なんだけども、人を傷つけて生きていくってそういう意味じゃないからね、まいちゃん。

綺麗に終わってはいるんですけど、これっきりで終わられると非常に据わりが悪いので、Web小説でも構いません、彼女のその後のエピソードをどうか読ませてくださいませ。

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Comments

最近本業が忙しく物語小説以外にも分厚い本を読んだりと忙しく(2回目)。天野寂さんの感想を見るのは入間作品を読み終わった後の日課なので毎回拝見させて頂いてますが作品ごとに感想を打つことができずすいません

強いて述べるのであれば入間作品を数年越しに読み直したら感想や登場人物に対する評価が変わっていることが多いです。最近読んだ作品だと『神のゴミ箱』で昔は桃さんがかなりグッジョブだったのですが今読み直すと感情移入するのは神さんになってました(でもラストで桃さんを好きな理由を再確認しました)

流れで書いてるので文章が滅茶苦茶で申し訳ないです!!ちなみに今は『消えたい: 虐待された人の生き方から知る心の幸せ』という本を読んでいるのですがオススメなので良ければ読んでみてください

また時間に余裕ができましたらコメントしていきたいです
Posted at 2016.06.17 (20:39) by yuu2 (URL) | [編集]
Re: yuu2さん
いえいえ、お暇な時、気が向いた時にコメントしてもらえるだけで嬉しいです。

入間作品に限った話ではありませんが、初読時と再読時では感想が結構変わったりしますよね。
同じ作品でも人によって感想が違ってくるように、同じ人間でもどんな状態かによって受け取り方は変わってきます。
昔はつまらないと思っていた作品が面白かったり、昔はあんなに面白かった作品がそこまででもなかったり。
たった数年でも、あのときの自分と今の自分はもう別人なんだなと感じる瞬間です。
ただ、私の場合、結構自分の感想を読み返すんですけど、全然変わらないなこいつとなることの方が多かったりします。

もし読んだらツイッターにでも感想をつぶやきますね。

はい、いつでもお待ちしております。
Posted at 2016.06.23 (12:12) by 天野寂 (URL) | [編集]
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