嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん11 ××の彼方は愛 解説

『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん11 ××の彼方は愛』の感想・解説編です。

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん11 ××の彼方は愛 感想

こちらは解説記事となっています。
普段から感想と言いつつ解説的なこともしているのですが今回、「よく理解できなかった」という感想や明らかに誤読しているような感想をかなりの数見かけまして、それなりに詳しい解説記事を書こうと思い立ちました。
がしかし、私の性格上どうしても感情的な文章になってしまう箇所が多々あります。
その点に関しましてはご了承下さい。

解説の前に、警告ないし忠告をしておきます。

鬼畜の極みであった。
……本気でしんどい。
ただただ、しんどかったです……。
しんどすぎて、しんどすぎて、感想書き始めるのにもめちゃくちゃ時間がかかってしまいました。
そして、書き始めてからがまたしんどい。
読み返すのがひたすらしんどい。
しんどい以外の語彙が消失するぐらいしんどい。

上の感想を見て「鬼畜の所業だの、しんどいだの、何を言っているんだこいつは?」と思われた方へ。
今、あなたが幸せならここから先は読まない方がいいかもしれません。

今回ばかりは正しく理解することが幸せとは言えませんから……知らない方が幸せなことが世の中にはいっぱいあります。いっぱい、あるんです……真実を受け止める覚悟のある方、答え合わせのしたい方はもうしばらくお付き合いください。

本作は入間作品史上でも稀に見るミスリードのオンパレードでした。
細かいものまで挙げていくとキリがないくらい、そこかしこに伏線が仕掛けられていました。
これは誤読する人が大量発生するのも無理はないと思います。
こんなことを書いている私自身、もしかしたら誤読している部分がまだあるかもしれません。
ですので、この解説を読んで「ん? そこおかしくね?」という部分がありましたら、遠慮なく指摘してください。

本作のミスリードは大きく分けて3つあります。
人物誤認、時系列誤認、オマージュ誤認です。
一つ一つはそれほど複雑なものではないのですが、これらが同時に重なっていることで、難解さが跳ね上がっています。
特に人物と時系列は目まぐるしく入れ替わるので、初読でこれを完全に把握し切るのは至難の業だと思います。

まずは人物誤認から、と言いたいのですが、人物誤認を語るのに時系列に触れないのは不可能です。
なので、まずこの2つについて解説していきます。

前提として視点人物は3人(5人)います(幕間のあっきゅんは除く)
そして、それぞれの人物と時系列は次のようになっています。

1.枝瀬あゆ(2033年=本編あゆパート、わたし)
2.枝瀬あゆ(幼少期の回想、わたし)
3.枝瀬まい(2044年=本編まいパート、2055年=4章、私)
4.枝瀬まい(幼少期の回想、私)
5.長瀬まゆ(2055年、私)

実はもう1人、長瀬あい(2055年、わたし)視点の存在が考えられるのですが、あくまでそういう解釈もできるというレベルなのであえてここでは触れないでおきます。

私の観察した限り、視点人物は大方認識出来ているのですが、そこに時系列を加えて考えると一気にこんがらがってしまう、そんな印象でした。
そして、おそらく時系列をきちんと整理出来ない原因はずばり『女子高生』にあると思います。
そう、今作を正しく認識するにあたってキーとなるのがこの『女子高生』です。
入間作品お得意の本名不詳キャラなわけですが、今回の呼び名は一際ずるいですね。
『女子高生』って呼ばれてたら、普通は女子高生だって思いますよ。
で、一緒につるんでいるまいも当然女子高生だと思うでしょう。
(冷静になって考えると、女子高生が女子高生のことを女子高生と呼ぶのは違和感しかないんですけど)
はい、まんまと罠にごしょーたーい、なわけです。
(ちなみに疑ってかかる病の私は最初『女子高生』を男子高生だと疑い、最終的にまいとくっつくと予想していました。我ながら見事な空振り三振でした)
でも、実はそうじゃなく、女子高生と一緒にいるまいは28歳のおねーさんだったのです。
『あねさん』呼びもまいの後輩かと思わせておいて、実はそのままの意味だったというオチ。
以上を踏まえて、女子高生からみた人物相関図がこちら↓
mima11zu.png
胸! 糞! 悪!
聞くも地獄、語るも地獄。
ここからが本当の地獄だ……
覚悟はいいか? 俺はダメだ……

『女子高生』の母親はあゆです。
ここまではいいでしょう。
最後におばあちゃんとなり、孫と戯れる姿が描かれています。
そして、父親は……誘拐犯なのです。
嘘だけど。をこれほどつけたいと思ったことはありません。
しかし、これは紛れもない事実。
先程、本作の理解が難しいのは人物と時系列が入り組んでいるから、と言いましたが、それと同じかそれ以上に障壁となるのが、その人の持つ良識や倫理観です。
これは単なる推測ですが、理解できなかったと言っている方の半分くらいは本当は理解できているんだと思います。
ただ、頭では理解できても、心情的にそれはあり得ないと無意識のうちに思考をシャットダウンしてしまっているのではないでしょうか。
それこそ、自分にとって認めたくない事実を認識できなくなったあゆのように。

「女子高生の両親があゆと誘拐犯であることはわかった。だがその場合、あゆと女子高生の年齢が辻褄合わないのではないか?」というような声もありました。
良識ある、当然の疑問だと思います。
普通、言いたくなりますよ。「娘と10歳ぐらいしか離れていないじゃないか」と。
考えうる限り最悪の可能性として頭をよぎることはあっても、まさかそんなことがあるわけないと一笑に付す。
それが健全な思考というものです。
が、悲しいかな、理不尽が溢れているのが世の常で。
そう、そのまさか。
考えうる限り最悪の可能性が正解です。
あゆは小学5年生(10歳)で誘拐犯に孕まされ、その後11歳で女の子(のちの女子高生)を出産した、これが彼女の身に起きた事件の顛末です。
発売から大分時間が経ちましたが、未だに胸糞悪すぎて吐きそうです。
レイプだけでも胸糞なのに被害者が小学生の女の子とか……この時点で作者は人間じゃないなって(※入間です)
だというのに悲劇はそれだけに留まらず、そんな年端もいかぬ少女が望まぬ妊娠までさせられていたという……こんな真相、気づかずにいられた方がどれだけよかったか。
いや、これが新作であったなら、胸糞悪さは拭えないものの、「なるほどっ! そういうことか!」と楽しめていたと思うんです。
でも、その少女は。
無残に蹂躙され尽くしたその少女は。
私の大好きな大好きな彼の大事な大事な娘さんなんですよ!!
未だかつてこんなに酷い10周年記念があったでしょうか?
楽しみに楽しみに、それこそ世界で一番楽しみにしていたと自負するぐらい楽しみにしていたんですよ私は。
それなのに、この仕打ちは酷すぎる。いくらなんでも惨すぎる。
彼が足掻いて足掻いてやっと手に入れた幸せを、どうして壊す必要があったんですか?
彼が絶望に打ちひしがれる姿を、変わり果てた娘の手をただ握り黙って項垂れる姿を、どうして読者に見せたんですか?
流石の私も今回ばかりは「10周年記念にこんな胸糞展開を持ってくる作家はいるまんくらいだろうな!」とか好意的に受け止めるのは無理です。
みーまー、というより、あっきゅんへの思い入れが深すぎて、彼の不幸は私の幸福足りえません。
以前どこかでコメントされていた「登場人物たちに特に思い入れはありません」という言葉に偽りなさすぎです。
それ自体は長所なんですけど、ものには限度というものがあるんです。
超えちゃいけない一線ってものがあるんですよ、入間さん。
こんなことになるなら、11巻なんて読まなきゃよかった。
続刊のために彼らの中の誰かが事件に巻き込まれなきゃいけないのなら、続きなんていらなかった。
でも、私は読んでしまった。
知りたくなかったこと、見たくなかったこと。
胸糞悪くて吐きそうになった。
知りたかったこと、見たかったこと。
不覚にも嬉しくて泣いてしまった。
悔しいけど。
不本意だけど。
彼と彼女が本当に、本当に幸せそうだったから。
やっぱり読んでよかった、読めてよかったなって。
あ、なんかこの感覚、すごく懐かしいな。
なんだっけ、いつだっけ、この懐かしい感じ。
……ああ、そうか。
みーまー1巻を読み終わったときのあの感覚に似てるんだ。
幸せってなんだろう?
きっと、それは――

解説すると言っておきながら、いつの間にかがっつり感想書いてる、それが天野クオリティ。
はい、そろそろ感想書きたいので、解説の仕上げといきましょう。
11巻および関連短編&WEB小説を含めた時系列がこちら↓
timemima11.png
悪・糞・斬!
私の長ったらしい解説読まなくても、人物相関図と時系列で大体理解して頂けるのではないでしょうか。
この他の細かいミスリードやオマージュ誤認に関しては、感想の中でその都度解説していこうと思います。

あいあいそれではお待ちかね(私がな)!
感想をはじめますねぃ。
(しんどいのは事実だけど、なんだかんだ感想書きたくてしょうがなかったから以降テンション高めです)

イラスト編へ続く

Leave a comment

Private :

Comments

主人公達が幸せに終わった話を掘り返して続編を作ると事件を起こさなきゃならない都合上その幸せをぶち壊してしまう次世代続編の法則にキッチリとはまってしまいましたね。正直4章の初めの方であのシーンを見たところから読む気力が無くなって読破にかなり時間がかかってしまうぐらい無いなと思わされる展開でした。大体の創作の次世代続編がこういう胸糞パターンなので正直恐れてはいたんですけど予想を超えてましたね。これ以上書くと完全に悪口になるのでここでやめときます。汚いコメントで申し訳ありません。
Posted at 2017.06.23 (17:39) by No.39 (URL) | [編集]
Re: No.39さん
それなりに覚悟はしていたつもりだったんですけどね……予想の斜め上というか死角から思いがけない方法で土手っ腹に風穴開けられたような衝撃でした。
双子が陵辱されるシーンも相当きつかったですが、それよりもその後のあゆちゃんの手を握ったあっきゅんが無言で項垂れているところでもう限界超えました。
思わず本を閉じてしばらく天井仰ぎましたよね、ええ。
再び本を開くのにあんなに気力を必要としたのは初めての経験でした。
いくら入間さんでも流石にこれはあんまりにもあんまりだと思います。
Posted at 2017.06.24 (00:07) by 天野寂 (URL) | [編集]
あまりにも壮絶な続編でしたね…
普段は見逃した伏線なんかを探しに2回3回と読み直すんですけど、今回はそれをする気力すら出てきませんでした
というか自分の中で11巻は半ばなかったことになってます

まさに金子な金子jrとか、末永く交流の続いているゆなりんとかそういうところはよかったんですが…
Posted at 2017.07.03 (13:45) by (URL) | [編集]
初めまして、まいまいです。
いつも天野寂さんのブログを楽しませていただいてます。
11巻を読み終わって、どうしてもこの想いを発散したかったのでコメントしちゃいました。

まず最初に、彼が謝ったり無言で項垂れているところはめっちゃ辛かった。悲しくて胸が痛かったです。
読み終わった気分は、なんとも言えないじ気分です。最終的にハッピーエンドだぜ!みたいに締め括っちゃってますけど、結局壊れたものは壊れたまま。確かにその残骸の上に新しい幸せがあるのかもしれないですけど、やっぱり悲しい。読み終わって1巻のサブタイトル「幸せの背景は不幸」をつい思い出しましたね。その背景の中に彼とその娘達が含まれてしまって……うぅむ。でも不幸の背景の中に、一点だけある幸せをあの子達が享受できて、その一点がどんどんこれから大きくなって背景を塗りつぶしてくれるんだろうなと思います。それでも塗りつぶしただけで、下地にあるものはやはり無くならないんですけどね。
やっぱりなんとも言えない気分です。心はぐちゃぐちゃ。

最近は平和なものが多かったから、余計にショックも大きくなっちゃったのかもですわ。すわすわ。
Posted at 2017.07.09 (23:35) by まいまい (URL) | [編集]
Re: さん
はじめまして、コメントありがとうございます。
返信が遅くなってしまい、申し訳ありません。

なかったことにしたい、そのお気持ちよくわかります。
感想は人それぞれ、それに対して誰かが口を挟むようなものではありません。
と前置きした上で、それでも言わせて下さい。
読んだ以上、11巻をなかったことにしてはいけないと思います。

一度壊れたものはどうやっても直らない。
残骸を積み重ねて生きていくんだ。
僕も彼女も、たくさんの人が。


冒頭にも引用されているこの文章はシリーズを通して貫かれている重要なテーマです。
そうであるならば、みーまーを見守ってきた我々読者もこの苦しみを抱えて生きていかねばならない、と私は思うのです。
『生きていかねばならない』と書くと少し押し付けがましいですが、要するに『生きていくしかない』ということです。

ただやっぱり、終わり良ければ全て良しとは程遠い後味の悪さは如何ともしがたいですよね……
Posted at 2017.07.14 (06:01) by 天野寂 (URL) | [編集]
Re: まいまいさん
はじめまして、コメントありがとうございます。
返信遅くなってしまい、申し訳ありません。

彼があゆの手を握って無言でうな垂れているシーンが一番辛かったですよね。
心が血を流すようなあの胸の痛みは死に至るレベルだと思います。というか、精神的に何度か死にました。辛すぎます。
今までは色々辛い目に遭いながらも最終的にハッピーエンドな彼らの姿にめでたしめでたしって思えてましたけど、今回は流石にそうもいきませんよね。
もうこれ以上誰も傷つかずに済む世界はなかったのか、そんなたくさんのもしもを考えずにはいられません。
でも、どれかひとつでも欠けてしまえばラストの幸せな家族もありえなくなってしまうわけで……このシリーズの根底にあるのはやはり『幸せの背景は不幸』であり、『残骸を積み重ねて生きていく』というテーマだったなぁと。そこは1ミリもブレなかったなと思いました。
……少しくらいブレてもよかったのに(本音)

最近ぬるかったのもありますし、まさか10周年記念に過去最低の胸糞展開をぶっこんでくるなんて誰が思うっていうんですか!! って話ですよ!!(ブチ切れ
Posted at 2017.07.14 (16:54) by 天野寂 (URL) | [編集]
あぁ、やっぱりそういことだったんですね。私も最初読んだ時、流石に監禁虐待まではあっても強姦は無いだろうって勝手に思い込んでました。服を、体の自由を〜剥ぎ取られる。人の身体を、姉様をさんざん舐めまわしてかみ潰して〜という文を読んでも暴力的な事はあれど性的なことは無いだろうって勝手にマイルドに解釈してました。
だから4章の後半あたりで人が多すぎて、登場人物がしっちゃっかめっちゃかになっちゃいました。このブログのおかけでなるほどそういうことかっと理解出来たと同時に、本当に失礼ですが知らなきゃよかったって思ってしまいました。心がとてもいたい。
実は1巻でみーくんとまーちゃんの監禁事件を読んだ時も性的虐待は受けてないだろうって思い込みたくて、ナシだと思ってたんですけど、やっぱりまーちゃんも同じ目にあってたのですかね...。
今思い返すと、太ももの傷もやはりあっきゅんパパにそういうことされた名残なんでしょうかね。
新刊が出て嬉しい反面知らなきゃよかったってことがいっぱいでこんなのってないよという気持ちです…。
Posted at 2017.08.08 (01:53) by ソウ (URL) | [編集]
Re: ソウさん
はじめまして。
コメントありがとうございます。

頭では理解していても「流石にそんな酷いことはしないだろう」と思いたくなりますよねやっぱり。
理解できると怖い話ならぬ理解できると辛い話でした。
出来ることなら何も理解出来ずに最後の幸せそうな姿だけを幸せな気持ちで眺めていたかった……切実にそう思います。
でもやっぱり『残骸を積み重ねて生きていくんだ。』という彼の言葉がこのシリーズのテーマだと思うので、どんなに信じ難い真実であろうと目を逸らさず受け入れるのが私たち読者に出来る唯一の祝福なのではないかと。
何を隠そう私もマユはレイプはされていないと思い込みたい派です。
本文にばっちり書いてあるので性的虐待を受けているのは間違いないのですが、強姦というか要するに孕まされるような行為はされていないと思っています。何の根拠にもなりませんが、別に南さんはロリコンなわけじゃないですし(必死)
これに関してははっきりとした描写はないので個々人の想像によると思います。
そして、なるべく穏便な解釈をしていた私のガラスハートは今回見事に砕け散ったと、そういうわけです。
太ももの傷をつけられたときの描写は1巻に載っていますよ。
両親を殺せと命令されて嫌がったマユの太ももを肉切り包丁でズパッとやりやがったんですよあのクソ親父。
Posted at 2017.08.10 (18:57) by 天野寂 (URL) | [編集]
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
10 12
発売カウントダウン!
入間人間著作一覧
11/15更新

刊行年月日順リスト

シリーズ別著作リスト

刊行予定リスト
天野寂のお気に入り
Profile

天野寂

Author:天野寂

“あまのじゃく”と申します。
読書メーター始めました。

このブログについて

Recent Entries
RSS
Recent Comments
Categories
Archives
FC2カウンター
RSSリンクの表示
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

QRコード
QRコード