もうひとりの魔女 感想

2018年1冊目! 『もうひとつの命』の続編となる『もうひとりの魔女』の感想です。

mouhitori
かけがえのない友情を求めた、少女と魔女の物語。

「今年は最悪の夏休みだ。わたしはこの夏に、やり残していることがある」
 一度死んでも生き返ることができ、その際にひとつの願いを叶えられるという不思議な木の実を手に入れた子供たち。
 二度目の死を迎えてこの世から消えていなくなったもの。別に誰かに成り代わったもの。自分を殺した相手への復讐心を募らせるもの。
 各々の願いがもたらした因果は絡み合い、物語は予想だにしない展開を迎える。
 そして永き時を生き続け、彼らの行く末を見届けた魔女は、何を願う。

満場一致で2018年暫定1位確定です(当たり前とも言う)

雲ひとつない晴れやかな読後感でした!!
そう、まるで表紙のような!!(イラストには雲あるけど)
ここまで捻りのない真っ直ぐな話は初めてなんじゃないかってくらい衒いなく素直に“生きること”が描き切られていました。
そしてなにより、タイトルが素晴らしかったなぁ……幸せっ!!

はい、それではすごく久々のがっつり感想いってみよー!!

イラスト
読む前から素晴らしいと思ってましたけど、読み終わってから見返すと更に素晴らしいですね。
ピンナップの背景オンリーver.もびゅーちほっ!!
三角帽子と花びらが紫なのがよく分かりませんでしたが、章題の魔女の色と合わせた感じですかね?
イラストの美麗さはもちろんなんですけど、個人的には前作と今作、どちらのイラストも本文のイメージそのままなのがすごく嬉しいというかポイント高いんですよね。
それもそのはず、ちゃんと本文読んでくださっているそうじゃないですか!
もうね、くろのくろさん大好き(チョロい
心の底からワンモアシリーズのイラストをくろのくろさんにやってもらえてよかったなと思います。
また別作品でお会いできる日を楽しみにしています。

・魔女の正体
本編の感想に入る前に少しだけ前作のおさらいを。

もうひとつの命 解説

我ながら見事な名推理でした!
まぁ、魔女=生まれ変わった藤沢妹説に関しては確信があったので今更ドヤ顔で語るつもりはありません。
なんのこっちゃという方は上の解説記事を読んで頂ければと。
書いてあること全部当たっているわけではありませんけど、概ね解釈通りでした。

『魔女は死ぬ度に別人として生まれ変わっていた。そして、藤沢妹は車に轢かれて死ぬ前から既に生まれ変わった姿であり、赤い木の実を食べた(命のストックがある)状態だった。死後、彼女が生まれ変わったのが魔女であり、江ノ島に語っていたいろんな人になる夢(最後は殺される話)は今まで経験してきた数々の死に際の断片的な記憶だった。』

文句なしのパーフェクトアンサーじゃないでしょうか!(ドヤ顔しとるやんけ!

藤沢①

書き出しは『魔女の夏休み』に呼応させてあるような気がしました。
砂の城は姉と妹という関係の暗喩。
妹がいる限り、自分は永遠に姉であり、逆もまた然り。
しかし、二人で作った砂の城はあっけなく崩れ去っていった……。

心臓止まってるのに普通に血は流れてる……一体どういう理屈なんだろう。
でも、花の匂りがするくらいですからサラサラで美味しい血なんでしょうね、大蚊気!

「色んな死に方をしてきたみたいだから。刀で背中を斬られたとか、頭をかち割られたとか、燃やされたとか。ああ、あと自動車に轢かれたこともあったわ、多分」

藤沢も最終的には魔女が生まれ変わった妹であると気づいていましたが、ここらへんの台詞から判断したんでしょうか。

生まれ変わったばかりの七里からは花の香りがしない、ということは実の寿命が近づくと匂いが強まるということっぽいですね。
藤沢が推測しているように魔女の場合は赤い実を大量に食べているから特別強いというのはその通りなんでしょう。

死んだ人間の霊魂やらを信じているわけではないけれど、人は亡霊に取り憑かれている。頭の中に、過去や思い出という幽霊がいるのだ。

過去や思い出を幽霊に例えるのはすごく藤沢らしくていいなと思いました。

「だって今、あなたのこと嫌いじゃないもの」

前作のラストでは自分が思っていたほど嫌われていなかったかもしれないことにショックを受けていましたが、藤沢は人に好かれることに全くといっていいほど耐性がありませんね。
努めて人と繋がりを持たないように生きてきた中で、嫌われることはあっても好かれることはほとんどなかったでしょうから、当然と言えば当然なんですけど。
そんな捻くれ者の背中を押そうと少しは素直になりなさいと諭す魔女。
この時の魔女がどんな気持ちだったかを想像すると、とても優しい気持ちになります。

「真っ新になって関係をやり直して、仲良くなる。そのために記憶というしがらみを消したのよ」
 そう言った魔女は、その続きになにかを呟いた。でもそちらは聞き取れない。

聞き取れなかった呟きは「私みたいにね」とかかなって。

藤沢②

前作でも同じ感想を抱きましたが、やはり藤沢はみーまーのあゆに似ているなと。
姉であるというアイデンティティを保つためにとても大切なことから目を逸らしてしまった少女たち。

藤沢母が花の香りについて私は嫌いじゃないと言及するシーンは地味に泣けます。
そんなに強くはなかったにせよ、藤沢妹からも同じ香りがしていたはずで、無意識レベルで懐かしく感じているのかもしれません。

藤沢と生まれ変わった七里のやり取りを見ているとなんかすごくあっきゅんを思い出します。
どこがって言われると説明に困るんですけど、なんかこの頭使わずにその場その場でテキトーに喋ってる感じがすごくあっきゅん味あるよね、さっちゃん。
さっちゃんってのは藤沢の沢から来てるのか、それとも下の名前がサチコなのかどっちなのかな、さっちゃん?

生前(という表現が正しいかはさておき)、いくらやっても勝てなかった天敵に拍子抜けするほどあっさりと勝ててしまったナナちゃん。
彼女が意図せずして流した涙のわけは悲願を果たした喜びか、はたまた、かつての自分ではついぞ叶わなかった悔しさか。

生前のツンデレしちりんも良かったですけど、生まれ変わったポジディブしちりんも良いですね!
どうすれば嫌われるか頑張って考えてるそこのキミィ、諦めて大人しく受け入れよう!
この子に嫌われるのは難易度ベリーハードっしょ。

以降、前作七里パートのデジャブデートのはじまりはじまり。
ただし、立場が逆転しているの巻。
いや、そこまで再現しなくても良くない? 口で説明すれば済む話では?
てか藤沢って七里母の唇も狙ってた節があるし(曲解)、ことあるごとに七里の唇狙ってるし、キス魔なのでは?
最近のいるまんは隙あらば百合ってくるので油断なりませんね! プソプソ!
と思ったら生まれ変わった七里さんのノンケ宣言……お、おぅ。

「別に、そんな風に引き返す必要もないでしょ」

七里に向けた言葉が、一番刺さるのは自分自身で。
人と繋がることで少しずつ少しずつ今までとは別の自分へと変わっていく。

前の章で藤沢が海に流されて消えたって電話がかかってきた時点で、稲村の最期に察しがついて暗澹たる気持ちになりましたが、わかっててもめっちゃキツい……
赤い実を食べた5人の末路は悲惨は悲惨ですけど、最低限の救いはあったように思うんですよね。ただし、稲村を除いて。
一度死に、恥も外聞も捨てて「ぼくを見て!」と縋るも、既に七里の眼中に自分はないという事実に絶望し。
二度死に、己を含む全てを捨て、憎き仇の姿になってまで手に入れたかった彼女は既にこの世にいなかった。
そんなんもう生きていたって仕方ないですし死ぬしかないですよね……別に稲村のことそんなに好きじゃないですけど、それでもやっぱり辛いものは辛いです。
でも、三人仲良くなんて絶対に無理な以上、藤沢と七里が幸せになるために稲村の犠牲は必要不可欠だったんだと言い聞かせるしかありません。
こういうところ、入間作品は本当にシビアですから。

「泣いてるやつが飽きるまで、そっとしておいてあげて」

本作でベスト3には入る、名シーンではないでしょうか。
稲村には救いがないと言いましたが、彼女が好きだった七里が流したこの長い長い涙が稲村にとってせめてもの救いであってほしいなとそう願わずにはいられません。
さっきからみーまーばっかりしつこいなって思われそうですけど、このシーンはみーまー10でみーくんを埋葬するマユが涙するシーンを思い出しました。
と、しんみり感傷に浸らせてかーらーのー

ママおっぱい!

不意打ち過ぎて腹筋がひきつけを起こしかけたじゃないですか!!
七里はもちろん、藤沢のキャラが崩壊していくぅ!!
と、また一転、ガチムードに。緩急の差が激しすぎる。
生まれ変わる前の七里もきっと一目見て藤沢のことを気に入っていたんじゃないかなって。
だけど、頑固で素直になれない性格が災いして目の上のたんこぶポジションに定着しちゃったんでしょう。多分。
生まれ変わって素直になった七里は友達になろうと、仲良くなってやると宣言します。
そして、私が死んだとき、死ぬほど悲しませてあげる、それが私なりの復讐であると。
捻くれ者を落とすのに一番効果的な誘い文句ですね、さっちゃん?

魔女①

魔女がまだ魔女でなかった頃の話。
思った以上に大量の実を食べていたようで、仙豆をボリボリ食ってたヤジロベー状態に近いですね(特に近くはない
前作ラストで人を殺したことはないが鳥を殺したことはあると言っていたのはこのことでしょうね。
ただ、普通に狩りをして肉は食べていたはずなので、もっとたくさん殺していたとは思いますけど。
あと、元来妹だったみたいなので、妹属性は天然由来ですね。

不老不死者にとって避けられない永すぎる生の中で生きる意義を保てなくなる境地。
死ぬ度に別人に生まれ変わるとは言え、魔女も同じように磨り減っていき、とうとう最期のときがやってきます。
普通だったらここでやっと死ねると死を受け入れるのが王道だと思うんですけど、散々生きて生きて、嫌というほど生き続けてきても、死を前にすると急に怖くなって死にたくないって生に縋ろうとするところが入間作品らしいというか人間臭くてリアルだなと感じます。
そんなわけで、8年前のあの日、森の中で倒れていた魔女は死んだふりではなくガチで餓死寸前の状態だったと。
この状態だと生まれ変わる前に願う間はなかったと思うので、そのままの状態で生まれ変わったんでしょう。
少なくとも外見に変化はないようでしたし。

 夜のような黒い髪が宙を流れる。
 私はそれを、少し低い場所から眺めるのが好きだった。

妹だったときの記憶はほぼほぼ戻っている感じですね。
あのときのキスもとい人工呼吸で記憶が戻ったという仮説は、七里にキスしても記憶が戻らなかったことから間違っていると判断すると、死ぬ前に両親や姉のことを思い出そうとしているので、それが願いとなって記憶が戻ったのかもしれませんね。
と言っても、七里の場合は記憶を失くすことが願いだったので、その願いに反することは起きないという可能性も考えられますけど。

触れてみるとやっぱり、背は彼女の方が少し低い。……低いのか、と思った。

常に見上げる存在だったお姉ちゃんより大きくなってしまったことを寂しがる魔女っ娘ちゃん。
姉は姉で姉過ぎますけど、妹は妹で妹過ぎますね(日本語の奥深さをご堪能下さい)

「あなたは孝行娘ね。親を悲しませないで済むから」

親より先に死ぬ。
それ以上の親不孝はありません。
この台詞からは魔女の後悔が伝わってきます。
魔女がこうして藤沢の元へやってきたのは大好きな姉の側にいたかったというのももちろん本音でしょうけど、自分が死んだせいで悲しませてしまった両親や姉へのせめてもの罪滅ぼしでもあったんじゃないかなって思います。

「あれ?」
(中略)
「今、なにかおかしいことに気づいたの」
「うん?」
「なんだろう……前もこんなの感じたけど」
(中略)
「ふん……ふん」
 彼女がどんなことに疑問を抱いたか、実はおおよそ推測はついた。
 でも本人が気づかないのであれば、こちらから語ることでもなく。

知らず知らずのうちに魔女に対してまるで妹にするようにあれこれ世話を焼いている自分に気づかないでいるお姉ちゃんってところでしょうか。

「もしかすると」
 最近の傾向を踏まえて、そのことに気づく。数少ない、私の謎だ。
「まぁ、いいや……それは多分、正しかった」

空腹になると昔のことを思い出す、となると、餓死寸前の飢餓状態であれば思い出す記憶の量も鮮明さも増すはずです。
そして、魔女自身覚えていない願いはきっと今叶っていることで、それは正しい願いだったと。

今の状態で死んだふりはアカン! それは洒落にならんやつ! と思ったら、案の定冗談では済みませんでした。
藤沢の涙の理由はおそらく、頭では理解していなくとも本能で魔女が自分の妹だと分かっているから、なのかなと。
それを分かった上で、今の自分に対しての涙ではなくとも、魔女にとっては何事にも代えがたいくらい嬉しい出来事で。
魔女は藤沢の照れ隠しを微笑ましく見てますけど、そんな嬉しそうな魔女の方が微笑ましいんですからね!
んでもって、なんだかんだ悪態をつきつつも優しい藤沢ににんまり。

『お前にこの帽子を送ろう。ほぅら、よく似合う』

シャンクスかな?
まぁ、私の脳内では老婆ボイスで再生されたんですけど。

 私はそうした彼女の、捻くれていないものを感じ取ってそうか、と思う。
 ……そうか。そうかぁ、と納得する。
 赤い実に端を発した彼女の物語は、終わりを迎えたのだと確信する。

魔女が藤沢の元へやってきた一番の目的が果たされた瞬間でした。
妹の、昔の自分の死を受け入れられず、人との繋がりを拒絶し、過去に固執し、後ろ向きに死んでいく姉にどうにかして人と繋がり、未来を見据えて、前を向いて生きていってほしい、というかつて妹だった魔女のたったひとつの、ねがい。
藤沢も魔女も二人とも本当に良かったねと思うと同時に、あぁ、魔女はもうどこかへ行ってしまうんだな、としんみりみり。

「私が願ったのはきっと、思い出すこと」

一気に全部思い出したわけではなく、少しずつ記憶が戻っていたみたいですね。
そして、1200年分の記憶を思い出すのにはたかだか8年じゃ全然足りないっぽい様子。まぁ、そりゃそうか。

大好きな姉と一緒にいられる幸せ。
嬉しそうに語る姉の話を聴ける幸せ。
なんでもない今日という日がいつかかけがえなのない思い出になる幸せ。
生まれ変わって今の記憶が失われても、姉の思い出の中に自分がいる幸せ。
スーパー捻くレディに嫌いじゃなくて普通と言われた幸せ。
数えきれないほどの幸せの波に揺られて、ひっそりと別れのときがやってくる。

別れ際、姉の寝顔を目に焼き付けるところも切ないですけど、両親に対して礼を告げるところは色々と込み上げてくるものがありました。
このまま家に留まって、また姉の前で死ぬわけにはいかないですもんね。
死に目を見せない猫のプライドってやつです。多分。
このおばさん、人を見る目がありますね! 鋭い!

身体が植物になろうとも、まだまだ生きるぞ私は。
だって、私は幸せだから。楽しいからだ、とても。

おいおいまだそんなに大量に赤い実持ってたのかよ! って思わずツッコミましたが、魔女が口いっぱいに赤い実を頬張る姿が泣きそうなくらい嬉しかったんですよ私は!!(謎ギレ
こういう素晴らしい名シーンがあるから入間作品はやめられないっ!!

「楽しかったわ、お姉ちゃん」

ここは多分、本作屈指の種明かしなんでしょうけど、全く驚けなかったのが少し残念です。
はぁ、聡明すぎるのも考えものですね(ウザい
でも、この台詞が聞けただけで満足満足。

魔女②

幼き日のお姉ちゃん可愛すぎでは……ロリコン違うから、女子高生でもめちゃくちゃ可愛いし!
本作を読み終わってから前作『もうひとつの命』を読み返すと新たな発見があったりして、更に楽しめるのですが、その中でも藤沢家を訪れた直後の魔女の台詞がもう、もう……!

「お風呂掃除二回もしたわよ。えらい?」

えらいっ!! とってもえらいっ!!
すごく嬉しそうな魔女のにっこり笑顔で泣きそうになるんですよこれが……。

火葬場で生き返るとかぞっとするというか、わざわざそんな詳しく描写しなくても良くない? 必要あります?
ここで相当数の実を消費したはずで、あともう少し燃え死んでいたらこのまま死んでいたという……果たして運がいいのか悪いのか。
それはさておき、ここから分かることは生き返るときは死体のある場所でしか生き返れない、ということです。
つまり、藤沢妹として生まれ変わったとき、藤沢母のお腹の中に生まれ変わる、といったことはできないはずなので、ではどうやって藤沢家の娘として生まれ変わったのか? という疑問が生じます。
真っ先に思いつくのは元々魔女とは別に藤沢家には次女がいて、その娘に成り代わった可能性ですが、これは魔女がその娘を殺したりしない限りタイミング的に無理があり、魔女は人を殺したことがないと言っているのでまずあり得ないでしょう。
赤い実の効力は基本的に食べた本人にしか影響がありません。
特に稲村が良い例でしょう。
他人にも効果があるのなら、七里は稲村が望んだようになったはずです。
なので、元々次女がいない藤沢家の認識を変え、妹として生まれ変わる、というのはどう考えてもおかしいです。
とここまで考えてから、一人例外がいるのを思い出しました。
そう、和田塚です。
彼は自分自身だけでなく全人類(正確には全生物)の認識を変えたと見ることができます。
であるならば、魔女も同様に藤沢家の認識を変え、次女として家族の一員に加わったのでしょう。
前作を読み返してみると

 登場も唐突だった。気づいたら妹がいて、そしてわたしは姉になっていた。いつ頃からそうなっていたのか記憶は薄く、明確に拾いあげることはできない。そういうところも含めて不思議だった。でも、生まれは覚えていなくても、喪失はいつまでも心に残る。

まさにここじゃん! という箇所がありました。
幼すぎて覚えていなかったわけではなく、そんな記憶は元からなかったと。
そう考えると「血が違ったら、お姉ちゃんはお姉ちゃんじゃない?」という質問やその後の「あ、でもお姉ちゃん好きだよ」の意味もまた違った読み取り方ができますね。
こちらの疑問は一件落着なんですけど、もう一個疑問がありまして、こんな風に生まれ変わっていたら、骨上げのとき、騒ぎにならなかったのかなって。
毎回すぐに目覚めるわけではないようなので、骨上げのときは運良く骨のままだったとしても、その後骨壷に入れてしばらくは自宅に置いておくことになります。
その状態で復活したら骨壷割れて骨が失くなるという大事件が発生してしまうんですけど……
そもそも死体がバラバラになった場合はどこの部位を基準に生まれ変わるんでしょうか?(なんか亜人の話みたいになってきた)
骨壷に入れなかった残りの骨を元に生まれ変わったんですかね?
それとも燃えカスになった脳が核になったとか?
まぁ、正直ここらへんはどうでもいいんですけど、どうでもいいことまで真面目に考えてみるのが私の趣味なのです。

生まれ変わり、魔女の一人称が『私』から『わたし』に変わっています。
生まれ変わった魔女は先程私が抱いたのと同じ疑問を抱いていますね。気が合いそう。

女の子からの菓子パンの誘惑を振り切るとは……入間作品の中でも最上位の意思の硬さです。
それだけ、人と関わらないことを徹底している様子が窺えます。

 できるなら。家族を心配させるのはよくない、という刷り込みがあった。

別人になっても、そういう根っこの部分は変わらないんですね……ほろり。

「もう独りの魔女ですもの」

タイトル回収。
この理屈で『もう、一つの命』と捉えることもできます。
ただ、本作はダブルミーニングのうち、もうひとつの意味が秀逸なんですよ。

母を求めて七千里。
花の香りが懐かしいと語る少女と出会い。
すべてが始まった、赤い実のなる木に辿り着く。
その出会いを運命と受け取って、限りない生を終わらせることを決めた。
死ぬことのない生は果たして生きていると言えるのか。
それは魔女にしか分かりませんし、魔女にさえ分からないかもしれません。
でも、もうそんな疑問ともおさらば。
これからは魔女も人間と同じように生きて生きて生きて、最期に死ぬ、それだけの人生です。

あっさりとトレードマークであるとんがり帽子を譲っちゃう魔女さん。
もう、魔女ではなく、少ししぶとい人間になっちゃいましたもんね。
ところで、藤沢妹のとき、帽子は持っていなかったはずですけど、昔々に貰ったみたいな回想はなんだったんですかね?
長いときを共にしてきた相棒かと思いきや、結構手に入れたばっかりとかカッコ悪くないですか!

また何度か生まれ変わって、時は経ち……

 (前略)ただそのためには恐らく人並みの生活というものが必要で、それを得るのは不可能に近い。そういうものを願えばよかったのだろうか。以前にもそんなことを求めた覚えがある。でもそのときに起きたことを、わたしは本能的に忌避しているような気がしてならない。
 だから無意識にでも、他人様の生活に割り込むような願いを乞わないのだろう。

要するに、人と関わってから死ぬことでその人たちを悲しませてしまうのはもう嫌だってことですよね。
例え自分がどんなに幸せになれるとしても、あのとき姉に味あわせたような思いはもう誰にもさせたくないってことですよね。
や、優しすぎて涙がね、出ますよ……

「ずっと恥ずかしかったわ」

あの藤沢が魔女を探すために、おそらくは何年も何年も恥ずかしさと戦いながら真っ赤なとんがり帽子を被って町中を歩き回っていたなんて……ほろほろり。
というわけで、タイトル回収その②。
もうひとりの魔女=藤沢はタイトルを見た時点で誰もが予想したと思いますが、こう来るとは夢にも思いませんでした。
このタイトル回収&ダブルミーニングは本当に素晴らしいと思います。

 わたしが『魔女』に出会ったのは、そんなときだった。

前作や冒頭、『魔女の夏休み』で何度も繰り返される『あの頃の~』というフレーズは若干無理矢理感がないでもありませんが、最後の一文に関しては認めましょう、お見事であると。

彼女の願ったこと

エアコンの効いた天国で生き別れた姉と死に別れた妹が再会する、なんてちょっとロマンチックに過ぎますね。
母親は花の香りのする(=赤い実を食べた)人物ということで真っ先に七里を連想しましたが、やはりというかなんというか七里の娘でしたとさ。
実を食べた人間も子孫は普通に残せるみたいですね。

七里の娘とのやり取りや七里のことを語る様子から、七里の復讐は見事に果たされたことが伝わってきます。
こういう書かないことで逆に際立たせる手法というかエピローグの使い方すごく好きです。

「やっぱり私の頭にある方が魔女らしいかな」

この台詞も『わたし』ではなく『私』になっているところがニクいです。
入間さんの十八番である一人称を絡めた演出も大好きです。

「わかってる。妹だって、そうだった」

彼女がどこまで気づいているかは想像するしかありませんが、きっともう全てわかっているんじゃないかなって。
魔女が生まれ変わった妹だったことはもちろん、妹が本当の意味で妹ではなかったことも。
全部理解した上で、それでも姉として、妹との思い出を胸に。

「ちゃんと掃除できたら、褒めてあげるから」

最高の笑顔エンドとか卑怯ですよ。
もうね、大大々満足してこのまま召されてもいい感じ。
このラストは『僕の小規模な奇跡』のラストもちらっと思い出したんですけど、それよりなによりみーまー11のラストシーンとダブって見えて二重の意味で泣きそうになりました。
長い長い時を経て、やっと妹と再会できた藤沢が、やっとまいと再会できたあゆの姿に重なって……良かった、本当に良かったです。

総評

嘘から出た実』で紹介したように前作『もうひとつの命』では“死ぬこと”が語られている、とのことでした。
対して本作は“生きること”が描かれていた、と私は思います。それも驚くほど真っ直ぐに。
藤沢と魔女が生きるために作った目的ではない、生きる目的を見つける、それが本作の大筋でした。
あと、前作未読でもOKと仰っていましたが、個人的に本作は前作既読者向けの1冊丸々ファンサービスな後日談だと感じました。
というのも、こちらを先に読んでしまうと『もうひとつの命』のオチが結構こと細かに書かれてしまっているのが……
七里や稲村はともかく、腰越や和田塚、江ノ島の顛末についてはそんなに詳細まで書かなくてもいいんじゃないかなって。
どちらが前半で後半かはっきり分かるタイトルならともかく、逆の順で読む人も少しは想定しておいた方が良かったんじゃないかなって、余計なお世話を焼きたくなりました。
正直、前作は魔女の正体が藤沢妹って仄めかしてあるところくらいしか印象に残っておらず、しかもそれがわかったところで面白いかと言われると微妙な感じだったんですけど、このカタルシスを味わうための下拵えだったのか!と今は心地の良い読後感に包まれて幸せです……
と、同時に前作の死んだとも死んでいないともどちらとも取れるラスト2行がたまらなく好きだったので、続編は蛇足だよなぁと思ってしまう自分もいます。
本作は間違いなく傑作ですし、どちらかと言わなくてもこの素晴らしき続編を読めた喜びの方が勝るんですけど、あの余韻をもう味わえなくなってしまったのはやっぱり少し寂しいです。
個人的にはこの相反する思い含めて、『もうひとりの魔女』は入間作品の中でもかなり上位に来る作品になりました。
かなり遅い2018年1冊目でしたけど、待った甲斐は十分ありましたね。
この調子だと久々の自信作らしい次回作が今から楽しみでなりません。

あとがき

章題がぼくらのリスペクトなのはわかりました。
他はう~ん、魔女がコエムシポジションとか?
多分、前作と本作合わせての話ですよね?
だとすれば、なんとなくわからなくもないですが、やっぱりわからないかもしれません(どっちだ

Trackback [0] | Comment [0] | Category [入間人間] | 2018.04.25(Wed) PageTop

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